これが我が家の芋煮会だ!

秋の収穫を祝って各自が材料を持ち寄り、手近なアウトドアで飲んだり食べたりを楽しむレクレーションを「芋煮会(いもにかい、いもにのかい)」と呼びます。本州の東北地方で特に盛んな秋の行事で、大勢でドッと繰り出すところなど、春のお花見に似ています。言うまでもなく、芋煮会の主役は「里芋」です。その他は何を入れてもいい「闇鍋」みたいな雰囲気があって、東北では誰も彼もが大いに秋を楽しむのだそうですが、残念なことに夏の短い北海道では里芋が充分育ちません。何度か試験栽培してみましたが、植えた芋より採れた芋のほうが少なく、翌年の種芋すら確保できません。諦めました。一時はスーパーの里芋を買おうとしましたが、そこはそれ、収穫祭として楽しむ意味合いが強い芋煮会。今では寒冷地でも良く育つ「山芋」を代役に据えております。

ジャガイモ以外は全て我が家の自家製です。白菜、大根、人参、ゴボウ、ネギ、スイートコーン、そして北国特産の山芋「姫神芋」。原木栽培のシイタケ、ムキタケ、ナメコも用意しました。安全な食べ物が食べたいがために、消毒薬、殺虫剤、除草剤などの農薬は一切使わずに栽培した食材です。主な肥料は雑草とアヒルやガチョウの糞を醗酵させた堆肥。ミミズが沢山住み着いているので土がフカフカしています。野菜の味って、こんなに甘いんだな……しみじみ感じる秋の一日の始まりです。

下拵えをするために野菜を庭まで運んでくると、鶴のように甲高く鳴きながらガチョウの夫婦がやってきます。放し飼いにしてあるので、それはもう、当たり前の顔をしてツマミ食いを始めます。
「あ、お前、大根かじったやろ!」「こら、後でやるさかい、白菜だけは勘弁してくれ!」などなど、賑やかなことでございます。

泥を落とすと艶々です。これは「耐病総太り」青首大根。これしかないというほど優れた品種で、味も最高。我が家では越冬用に100本ほど地下のムロに貯蔵しています。

ガチョウの性格は「子犬」そのもの。人が何かしていると遊んでほしくて邪魔します。叱ると拗ねるし、いちびって噛みつくし、家の車のエンジン音を聞き分けます。水鳥なので水遊びが大好き。ご覧のように野菜を洗うために用意したバケツにも首を突っ込んでご機嫌さん。ガンの仲間を品種改良した「アフリカ・ガチョウ」が正式名で、元々は高級食材「フォアグラ」の原料鳥なんですが、愛犬を亡くした悲しみに耐え切れず飼い出した新しい我が家の仲間です。うちの鳥に手ぇ〜出すヤツは血ぃ〜見るど!

ガチョウを追っ払いながらゴシゴシやると、採れたて新鮮野菜のビューティフルな色合いが明らかになりました。札幌人参、サラダゴボウ、姫神芋、そしてKさんから貰ったトヨシロ(ジャガイモ)。皆、立派な出来具合です。

白菜も良く締まってズッシリ重いですよ。品種は忘れました(笑)。何しろ無農薬ですから、害虫や疫病で全滅させない為に、違う品種を3つ、種蒔きから育てます。活着するとホッとして、どれがどれだか、どうでも良くなってしまうのです。自家用だから、それでエエのだ!

「はいはい、お持ちどーさん」白菜の外葉をガチョウにお裾分けです。嘴が黒いのがオス、黄色がメス。我が家の場合はそうですが、嘴の色は固体によって区々みたいですよ。因みにこの連中、呼ぶと必ず返事します。オスとメスが交互に鳴き交わすように返事するので、掛け合い漫才のような騒がしさ。野生のガンも鳴き交わしてコミュニケーションを取りますね。飛べないように改良されて、今はワンコのような性格になっておりますが、ご先祖さんの血が残っているのでしょう。それにしても、食べながら鳴くのはやめろよな。行儀悪いぞ、お前ら。

材料の種類が多いので、作業は手分けして同時進行していきます。これは「ダシ取り」。海で拾ってきて自分で干した「昆布」です。いわゆる「日高昆布」。今回は根元の良いところを使いました。エエ香りです。

勿体無い話ですが、ダシを取った後の昆布は畑へ直行させました。超スーパーぜえたく有機肥料! お蔭様で、ミネラルたっぷりの美味しい野菜が食べられます。山暮らしだけど、海にも感謝でございます。

これは「ムキタケ」。写真のように表皮を剥ぎ取って食べるところから、このような名前が付いたそうです。虫が入りやすいので、大きくなり過ぎないうちに収穫するのがコツ。鍋物にするとダシを含んで美味しいですよ。

鍋が煮えるまでの余興にスイートコーンを茹でます。「夢のコーン」という品種で、種苗会社が発表した年から、ずっとこれの一本槍。柔らかくて甘くて持ちが良いだけでなく、収穫適期が比較的長いのも嬉しいですね。

大方の材料が鍋に入りました。それにしても凄い量。この種の料理は、大量に作るほど美味しいんですよね。

いよいよ、今回の主役登場! 元々は「姫神芋」という名の短種山芋なのですが、我が家の場合は「比叡山系自然薯」と自然交配したものが混じっており、粘り、旨み、香りが優れた一味違うオリジナル品種です。

山芋って、トロロだけじゃないんですよ。煮て食べると凄く旨い。カレーに入れても結構いけます。因みに、我が家がジャガイモを作らないのは無農薬栽培が難しいからです。ジャガイモ産地には農薬に耐性を持った疫病やら害虫がおりますから、無農薬では先ず不可能。マチルダとか花標津といった品種なら何とかなるかもしれませんが、うーん、来年はアンデス原種系を試してみようかな。どうなることやら分かりませんが。

キッチンで粗方火を通したところで、庭へ場所を移します。下の青い箱は「収穫コンテナ」。バーベキューや鹿の解体でも大活躍しています。

最後の仕上げにネギを入れます。味付けは味噌仕立て。

なんだか、相撲部屋の食事当番みたいですね。

煮上がるのを待つ間、おひとつ如何っすか?

スイートコーンは平成15年度のような悪天候続きの夏でも、ちゃんと実ります。立派なものですね。そういえば、これもアンデス原産ではなかったですかね? 

よっしゃあ! できあがり! 色々入っています。本当は鹿肉を使いたかったのですが、毎日毎日、鹿肉の焼肉とかステーキとかが続いていたのでオカンに猛反対されてしまいました。「豚肉にする!」ということで、色の薄い肉が野菜の間から顔を覗かせております。

「秋のスペシャル丼、ヘイ、お待ち!」 アチッ、ウマッ、などと呟きながらパクツイテいると……ん?

「あれ? アピオスが入ってるやん!」

「ムフフフ」とオカン。何年か前から作付けを増やしている「アピオス」という名の芋(マメ科の植物なのに芋ができるエライ奴)が「隠し玉」として鍋に仕込んであった訳ですね。この芋、ホントに美味しいです。味が濃くて甘みがあって、何年かしたら我が家の芋煮会の主役の座はアピオスに変わっているかもしれません。

アヒルは群れで暴走するので柵の中で飼っていますが、臆病なガチョウは馴染んだ場所から絶対に遠出しません、私の長靴を引っくり返したり、オカンのキッチンガーデンの野菜をツマミ食いしたりしながら、庭の一部のように暮らしています。だから、青草しか食べないくせに芋煮会にも参加します。しかし、コンロの火で焼鳥になられても困るので、鍋に近づくたびに追っ払うと「なんでや〜、ワシらも混ぜてくれ〜、ケチ〜」と鳴きながら、少しだけ離れてくれます。こうして、秋の一日が暮れてゆくのでございます。うー満腹、2キロほど太りました。そして、しばらく屁に悩まされました(笑)。ごっつぁんです!