ウサ・ロースのスキヤキ

念のために言いますけれども、こんなところに吊るして熟成しようものなら、一晩でキツネにブン取られてしまいますよ。
屋内で皮を剥くと家族に嫌がられるから、発言権のない甲斐性無しのオッサンは一人寒空の下で行き場を失い、苦肉の策としてウサギを物干し台に引っ掛けたのでございます。

熟成11日でも、ウサギの皮は容易に剥がせますよ。
獲ったばかりなら、まるで靴下でも脱がせるような感じです。
(鹿も簡単な部類ですが、ウサギとは比べ物になりません)
鳥ならキジバトが毟り易さのチャンピオンですね。

剥いた途端に、ブワァッ〜!

物凄い熟成香が辺り一帯に漂います。

あまりの香ばしさに、我が胃袋はキュウキュウ鳴りっぱなし。
露になった艶々の太腿に見とれて、思わず、溜息。
ホンマに贅肉がないんよね、ウサギって。
仕事が忙しくて全身タプタプ化現象が進行中の私としては、ヨダレと羨望の眼差しで足元の雪を融かすしかないのでありますね。

脂らしい脂は、股と肩甲骨の2ヶ所にちょびっとだけ。
毛皮は確かにフサフサしてますけれども、こんな体の構造でどうしてマイナス20度の原野で生きていけるのでしょうか????

きっと何か秘密があるに違いない!

陽は出ていますが、さすがに1月初旬の原野は寒い。手早くナイフを振るって四肢をバラシます・・・・これは腕。

左右どちらか分かりますか?

これは腿。
さすが、エゾユキウサギですね。
結構なボリュームがあります。
それにしても、体重3.3キロで、この骨の細さ。
走るというより跳ぶために特化した結果なんでしょうな。
ということは、肉の歩留まりが良いっちゅうことですね。
世界中で家畜化して食べられているのも頷けます。

これは胴体。
背ロースもヒレも付いたままです。
私の場合、鹿だったら首とアバラと骨盤を外し、サドルと呼ばれる状態でTボーンステーキ用に熟成することが多いですが、ウサギは鳥のように骨格が細いので、胴体はスープ用としての利用価値が高いですね。

これで部位別に利用可能な状態になりました。
雪より白いピュアな毛皮は、このまま乾して保存し、スピナー(ルアーの一種)のテイルや毛鉤に使います。
我が家の近所の川のアメマスや岩魚は何故か白い物に対する活性が異様なほど高いので、コレは効きます!

今回のウサ・スキに使うのは「背ロース肉」
鳥に似ているといっても、やっぱり獣。
とても立派な物が入っています。

エエ色してまんな。
思わず生でイキタクなりますが、ノウサギは「野兎病(やとびょう)」という伝染病に罹患している場合があるので、絶対に生食はダメなんですよ。
この病気は接触感染するので、捕獲してから加熱調理するまで素手で扱うことは避けねばなりません。
日本の野兎病は外国のものと比べて致死率が低いからと馬鹿にしている豪傑も少なくないようですが、根が小心な私共は丈夫なニトリル手袋できっちりガードしております。

ガラは他の使い道を考えているので、ダシは日高昆布で取りました。
自家菜園で育ててムロで保存しておいたゴボウのササガキを惜しげもなく投入。

和風ジビエにはゴボウが必須!

クリックすれば拡大写真が見られますよ。

この色艶! この香り!

な、な、生ぁぁぁでぇぇぇ〜

アカンちゅうに・・・・

ゴボウの香りが漂ってきたら、ウサ・ロースを静かに並べます。
野兎病の病原菌は熱に弱く、煮立てれば即座に死ぬそうです。
手袋をして扱い、火を通して食べれば安全ということですね。

ウサ・シャブは? 

半生はダメに決まってまんがな(笑)

上手く熟成できた肉は殆どアクが出ません。
しかし、僅かなアクまで取り除くことで味は更に良くなりますよ。
掛けた手間だけ確実に美味しくなるので、私はプロセスそのものまで楽しむよう心掛けています。

お肉に8割がた火が通ったら、野菜をブチ込みます。
今回は札幌ニンジンのみ自家製で、白菜やネギは市販品。
葉物のストックは足が速いので正月までに全部食ってしまって在庫ゼロだったんですね、残念ながら。

汁が少な目でも大丈夫。
湯気で火が通って問題なく煮えます。

土鍋は冬の必需品ですよね。
とは言うものの、扱いが面倒で蓋が良く割れるし、思ったほど量がこなせないし・・・・ついステンレスの深鍋を使ってしまう我が家(爆)
でも、今回はホムペのネタ用に土鍋さんが特別出演ですっ!

お味は・・・・?

こりゃ上品な鴨鍋や!!!!

姿は獣で、味は鳥。

やっぱりウサギの肉には何か秘密があるのかも?

ウサギを見ると、私はどうしても出猟中の野外料理の定番「丸焼き」を思い出してしまいます。しかし、ウサギ本命で出猟することは滅多になく、大抵の場合、鴨射ちに行った折に川筋のボサで寝ていたウサギを踏み出してラッキーチャンスを物にするといったあんばいなので、調味料の準備をしていないことが多いのです。はなっから泊るつもりのときは塩はおろかオリーブオイルや自家栽培した生ニンニクまで持ち込みますが、私の行動域はヒグマの生息地なのでキャンプ猟の装備はライフル銃オンリー。メインゲームはエゾシカであることが多く、ウサギはライフルで撃つのが違法なのは既にご存知のとおりです。まあ、そんな事情で滅多にウサギの丸焼きにはありつけませんね(笑) 今回は、空気銃でヒヨドリを撃ったついでに、我が家の畑のクロチク(ハチクの近縁種でタケノコも旨い)を丸坊主にしてくれたウサギを追跡の末にゲット。自宅から幾らも離れていない場所での猟穫だったこともあり、塩やスパイスを取りに帰れば、丸焼きは可能だった訳です。しかし、WEBのネタに使いたいというスケベ心に負けて、持ち帰って色々な調理法で楽しむことにしました。ウサギといえば鍋・・・・通称「ウサギ汁」は有名すぎて誰でも知っているので、背ロース肉だけで、ちょいと贅沢なスキヤキと洒落てみました。熟成1週間で食べるつもりでしたが、予定が狂って11日後の調理です。お陰で旨みタップリ、メチャメチャ美味でした。