ヤマブドウは味の差が激しい

ヤマブドウは不思議なヤツです。夏の天気が良いからといって豊作になるとは限らないし、多雨冷夏で最悪の年でも甘酸っぱくて味が濃いものにぶつかったりします。昨年良かった場所へ行っても全く実を付けていなかったり、鈴なりの状態に小躍りしながら袋に詰め込めば渋くてダメだったり、樹齢がどうとか言うだけでは割り切れない無法則の面白さ……山の恵みは概してこのようなものではないのでしょうか? 当たり外れのあるギャンブル的なところがあるからこそ夢中になれるのだと思います。ただ不幸なことに、初体験で酷い目に遭った人は中々その印象から抜け出せません。曰く「鹿や猪は臭くて食べられない」「ヤマブドウは酸っぱいだけで美味しくない」等々。諦めてくれる人が多いほど、私たちへビーな愛好者は取り分が増えて嬉しいのですが、この美味を知って欲しい気持ちも強いのですね。こと、ヤマブドウに限って言えば、食べてみなけりゃ、その株の味は分かりません。美味しい株の隣の株の実が不味いことが珍しくないのです。その逆も然り。ブドウ畑が僅か数メートル離れただけでワインの味が違ってくるという話の根拠がなんとなく分かったような気になれます。

9月上旬、ヤマブドウの粒が揃います(南十勝)。栽培種と比べれば、まだまだこれから肥大しそうに見えても、ここでストップです。

大小の差が大きいのがヤマブドウの特徴。マスカットみたいに色鮮やかな緑ですが、未熟果なので猛烈に酸っぱ渋いです。でも、秋の到来を祝う山の味に違いありません。

9月下旬、狩猟解禁間近のある日。イワナ釣りを兼ねた駆除パトロールで山道を歩くと、色づいたブドウ蔓が目に付きました。

そろそろ良さそうです。良い場所に出くわすと、大粒の房がプランプランぶら下がって壮観です。でも、無理して採りません。車で街からやってくる人は蔓を引きずりおろしたり、巻きついている木をノコギリで根元からチョン切ったりという無法を働きますが、この土地で暮らす私たちは、手が届くところだけ採取して後は残します。

この日の獲物は尺イワナ1尾(右下に尾鰭がチラリ)を頭に合計3尾と先程のヤマブドウ。ヘルメットはヒグマのテリトリーに入るときの用心です。尊敬する藤原長太郎さんの猟装から学ばせてもらいました。ただし、山中の白い物は鹿の尻毛と間違えられる恐れがあるので、競馬のジョッキーみたいにカラフルな模様入り。あるとき、これを被ってヤバイ場所でカモ撃ちをしていたら誰かに見られたらしく、「ヘルメット姿でカモを撃ち落したぞ。あいつは変人だあ」との噂が流れて弱ったことがありました。しかし、安全第一が私のモットーです。チョットくらい変わってるほうが愛嬌があるってもんです……よね?

残念ながら、北海道にはエキノコックスの問題があります。高い場所の蔓から直接千切って手で触れずに食べる分にはそれほど危険はありませんが、採取途上で汚れが付着するので、持ち帰ったら必ず水道の流水で丁寧に洗います。必須作業。一粒、口に入れると……

ま、まずい!(嘘) 採っちゃダメよ(大嘘)

ヤマブドウには殆ど果肉はありません。しかし、良いものが採れると濃い味が楽しめますし、皮や種子には掛け替えのない栄養成分が含まれるので、私は残さず噛み砕いていただきます。これは、歯が弱くなった老父が食べた物。水に漬けておくと鮮やかな色合いが滲み出ます。醗酵させれば、さぞかし旨いワインが……と試したくなりますが言うまでもなく日本国では無免許醸造は違法ですね。

アウトドア関係の本にはヤマブドウの焼酎漬けを紹介したものが少なくありませんが、これも立派(?)な違法です。個人の自家消費に限って梅酒などの果実酒が例外として認められているだけで、ブドウ(ヤマブドウを含む)は酒の種類を問わず規制バリバリなんですね。気になる人は国税庁のホームページをご覧になると疑念が晴れますが、酒に混ぜたらいけない素材の多さを知って嫌になるかも知れません。無機塩類も規制対象ですから、骨酒は素焼きイワナなら合法で、塩焼きイワナを熱燗に突っ込んだら即逮捕とゆーことになるんでしょうか(驚)。私、ご丁寧にも海の塩を使ってますから引っ掛かる規制対象が複数に及びます。次から骨酒は素焼きのイワナに変えないとダメってこと?(怒)。

この国には、手作りの一杯で夕空を愛でる自由もないのか!

いっそのこと、自家消費の為の自家醸造をライセンス制にしたらどうですかね? ちょこっと税金を納めて、1時間ほど講習を受けたら即OKとか。家で飲む分はジャンジャン作ってエエけど、他所へ持ち出して他人に飲ますのは禁止とか。税収は増えるし、違反者は減るし(笑)、悪いことは何もない……あ、ひとつありますね。更新日が来てライセンスが切れる前に元を取ろうと大量に仕込んで黄疸になるオヤジ……多分、私もその口です(泣)。

しかしねえ……酒税法って変な法律ですよね。明治時代に戦費を賄うために作られたって話ですから、富国強兵の申し子みたいな法律です。それまでは誰でも自由に作れたドブロクが全面禁止。さぞかし、全国の酔っ払いは驚いたことでしょうね。それが今も続いてる。そんな訳の分からんものに縛られるのはご免です。行政サイドも矛盾が分かっているから、全国各地で本物のビール作りの講習会がおおっぴらに開かれていても介入しないんでしょうね。つまり、自分で楽しむ分にはノープロブレムってことかな? そういうことなんでしょ? いや、きっと、そうに違いない!


やったあ! 「塩焼きイワナの骨酒」が復活!

めでたいので「ヤマブドウ酒」で祝い酒といきましょう!

え? 確信犯?