シイタケ栽培の勧め

我が家で育てているキノコは全て原木オンリーの自然栽培です。キノコによって使える木が異なるので、敷地に生えている木が使えない場合は、早めに業者へ予約しておきます。本州で暮らしていた頃はコナラやクヌギがシイタケの原木として一般的でしたが、北海道ではミズナラですね。写真は地元の広尾町森林組合から購入した3尺のミズナラ原木。
一口にシイタケといっても、数多くの種菌メーカーがあって、しかも一社が何種類ものシイタケ種菌を生産供給しています。ハッキリ言って、目移りして困るんです(笑)

我が家で栽培して成績が良かったのは、本州時代は「大貫菌じんのS2と不時栽培用のS117」、北海道では「明治製菓の春秋」、「秋山のA526」といったところ。
キノコの種菌には2種類の形状があります。一つは活性が高くてプロ向きのオガ菌(オガクズ状)。今一つは、写真のような棒状やクサビ状に加工された木材に菌を回した種駒(タネコマ)菌。我が家で愛用しているのは後者のほうです。仕事柄・・・・というべきか、弾(タマ)なんぞと呼び習わしております(笑)。
種コマを原木に打ち込むためにはドリルで穴を開けねばなりません。そのための専用ドリルをシイタケ・ビットあるいはシイタケ錐(キリ)と呼びます。種菌メーカーごとに種コマの直径が異なりますので、メーカー指定サイズのシイタケ・ビットを使います。写真は最も一般的な8.5ミリ。
私がキノコ栽培用に愛用しているハンド・ドリルは、日立のシイタケ専用ドリルです。10000RPMのプロ用ですから仕事が早いだけでなく、凄まじい高速回転によって開けた穴が摩擦熱で殺菌されるという隠れた効果まであります。ただし、このドリルは人差し指のトリガースイッチではなく、親指で操作するトグルスイッチになっており、手が疲れず便利ではあるのですが、万が一、手元が狂ってドリルが手から離れた場合も刃先は回り続けるのですね。安全性よりも作業性を重視したプロ仕様の怖い一面です。
ドリルを使って「千鳥」に開けた穴に、種コマを打ち込みます。ドリルがビュンビュン、木槌がコンコン、2〜3人で連係プレーすれば、仕事がドンドン捗ります。でも、たいていは一人でやっています。
害菌防止と活着促進のため、木口にも種コマを打ち込みます。
こういった傷の周囲にも打ち込みます。

種コマ1000発・・・・いやいや、1000駒で作れるホダ木(接種済み原木)は、我が家のやり方ですと、3尺原木に換算して45本になります。上記の害菌防止の駒打ちをやらなければ、50本といったところでしょうか。
種コマを打ち終わったミズナラ原木を「仮伏せ」する場所へ移動します。仮伏せは、原木をビニールシートで囲って散水し、キノコ菌を蔓延させて「ホダ木」へと育てる重要な作業です。これに失敗すれば、発生開始が1〜2年遅れたりします。シイタケの場合、面倒臭ければ、最初から栽培場所に「本伏せ」しても構わないのですが、仮伏せした場合と比べれば、上手くいっても半年遅れになりますね。
自然栽培におけるシイタケの発生時期は主に春と秋です。昼夜の温度差、降雨などの刺激で芽が形成されます。上手くできたホダ木は表面にフンワリと弾力があって、樹皮の下で芽ができているのが肉眼でも分かります。しかし、環境の変化に敏感なので、必ず「芽切れ」するとは限りません。写真のようにシイタケの赤ちゃんを見付けると、ホッとします。春に原木へ植菌して翌年の秋に本格発生し始めるのが平均です。環境が合うと翌年の春から出ます。どうやら我が家の環境には秋山のA526が一番合うみたいですね。(写真のシイタケは明治の春秋ですが)
品種ごとのベストな気温の時に降雨があると、シイタケは急激に成長します。ところが、シイタケそのものの品質は雨によって低下してしまうという皮肉な現象に見舞われます。これをシイタケ農家は「バレ子」と呼んで、干しシイタケとしての等級が著しく下がることを嫌います。
品質の良いシイタケ作りには、芽切れ時に降雨があって、成長時には降らないか、降っても霧雨くらいがちょうど良いようです。乾き気味に成長したシイタケは傘に夕張メロンのようなネット状のヒビ割れが走り、肉質締まって香りも良く、比較的保存が利いて、生でも乾しても素晴らしい風味が楽しめますよ。これくらいのサイズまでに採ると、胞子が逃げていないので濃いダシが出ます。大きくしたほうが得な気がするかもしれませんが、味は落ちるし、ホダ木の寿命も短くなってしまいます。小さめで採るのがシイタケ栽培のコツと言えましょう。
シイタケのホダ木は、写真のような形に組んで本伏せします。我が家の場合、シイタケは3〜4年ごとに植え足し更新しているので、現在は135本が活躍しています。環境がベストだと、木肌が見えないほど沢山のシイタケが発生しますが、そういう時に限って急に天気が崩れて、干しシイタケ作りは上手くいかなかったりします。たった一日のタイミングのズレで、冬場の大切な食料である干しシイタケの品質が下がってしまうのは悲しいのを通り越して、自分自身にムカッ腹が立ちますね。なんで昨日のうちに干さんかったんや〜。もう、後の祭りですけどね。
明日収穫して干しシイタケにしようと思っていると、山のことなので夜間不意に降雨があったりして、5〜6センチだった傘が一晩で10センチを超えることも珍しくありません。そんな時は、予定の2〜3倍に増えてしまった大量の生シイタケを前に呆然と立ち尽くすことになります。雨で湿っているので天日で一気に乾し上げるのは無理。従って、ストーブ全開のザル総動員となります。ザルから食み出した分でシイタケ料理のオンパレード! 因みに、シイタケゴハンはお米1合に対して、左の写真のサイズの生シイタケ1枚が我が家の標準比率です。
これは「接地伏せ」にした「ヒラタケ」のホダ木。敷地のヤナギを伐採して使ったものです。120本もチェーンソウで切り出すと、さすがに疲れました。伐採直後は生木ですから、合計1トン近くありますからね。これでキノコが上手く発生しなかったりすれば、ヘコミ倒して、しばらく立ち直れなくなります(笑)
昔、ビン栽培のヒラタケが「シメジ」として売られていましたが、今はヒラタケと正しく表記されることが多くなり、原木栽培のヒラタケも出回るようになりました。同じメーカーの同じ種菌を使っても、原木の種類が異なると味が変わります。原木を2種類用意して食べ比べてみると面白いですよ。
これはミズナラ原木に植えた「ムキタケ」の幼菌です。このサイズの時は皮を剥かないでも美味しく食べられます。我が家の品種は成長と共に色鮮やかな黄色からくすんだ茶色に変化しますが、野生のムキタケは傘の色がマチマチで、写真のように黄色が強いものから、アケビの皮みたいな青っぽいものまでありますね。まあ、皮が剥けるという間違いようのない特徴があるので、確認出来次第ゲットということになりますがね。
ムキタケは大量に生えます。東北では塩蔵して冬の間のオカズに利用されますが、同じ雪国でも北海道ではキノコ狩りの対象にしない地域が多いようです。北海道のキノコ狩りといえば、ラクヨウ(ハナイグチ)、ボリボリ(ナラタケ)、そしてマイタケです。これっきりといって良いほど偏っています。私は美味しい野生キノコが殆んど採れない近畿で生まれ育ったので、キノコに異常なまでの執着があり、野生キノコを採取するだけでは飽き足らず、山へ行けば生えているムキタケまで栽培しています。
鍋物に入れたり、ウドンに入れたりするのがムキタケの最も美味しい食べ方です。エゾ鹿鍋に入れると汁がしみて矢鱈激しく旨いので、来年はホダ木を倍に増やそうかと思っております。因みに自然界ではヤナギやエゾヤマザクラにも生えることがあり、どちらかといえば、ヤマザクラのムキタケのほうが美味しそうに感じます。ヤナギにはチョイと申し訳ない気はしますが。
接地伏せでは湿度が高すぎる場合、写真のような伏せ方をします。場所によりけりですね。これはミズナラ原木に植えた「ブナハリタケ」ですが、菌のまわりが上手くいかず、発生までに2年も掛かってしまいました。3年目の今秋、いよいよ本格始動か?
殆んどの食用キノコは春と秋が旬です。不時栽培といって、ホダ木を水に漬けると夏場でもシイタケを発生させることはできますが、自然栽培とは言えません。写真は生キノコが少ない夏に3回くらい発生するありがたい食菌「タモギタケ」です。ありがたいのですが・・・・味はイマイチ。味噌汁や天麩羅で1〜2度食べたら、後は朽ちるに任せている状態です。なんとも罰当たりな話ですが、ホッタラカシにしているので胞子が飛びまくって、周囲で増える増える(爆) キジの放鳥ならぬ、キノコの放菌といったところでしょうか。
この他にも、ナメコ、エノキダケ(これは私が野生種を固定しました。小さいけど旨い)などを栽培しています。色々栽培した結果言えることは、失敗が少なくて収量も多く、保存が利いて、どんな料理にも合うシイタケが家庭栽培には一番のお勧め・・・・ということです。

元々、シイタケは南方系のキノコだそうです。それが台風に乗って胞子が日本へ上陸し、弘法大師の時代、既に中国へ干しシイタケを輸出していたというから驚きです。

そして今、北海道でも平気で越冬してバンバン栽培できる品種へと改良され、もはや、我が国にはシイタケが栽培できない地域は皆無かもしれません。

まさにシイタケ天国。こりゃもう作るしかないでしょう・・・・という訳で、栽培歴20数年の私が実践している超す〜ぱ〜エエ加減な自然栽培(放任栽培)を紹介いたします。

シイタケはエライ!