【誕生日.2】





「HAPPY BIRTHDAY…Zelos…?」





『アホ神子!神子なのに女の尻ばっか追いかけてんじゃないよ!』
『そんなこと言われたって俺様好きで神子に生まれたわけじゃないし?』



『しいな、俺様が神子って忘れてるだろ?』
『…神子って自覚がない奴に言われたくないよ。』
『きっびし〜…でも忘れてくれてるほうが有り難いかも…ね。』




─何にもねえよ。祝い事なんて。

─…帰っちまーの?



「…あいつ。」



誕生日。

ゼロスが、神子として生まれた日。


貴族からのプレゼントの山。
…自分が神子だと、世界唯一の存在だと、再認識させられる品の数々。



嫌なんだ、『神子』という立場が。
恨んでる、『神子』として生まれてきた自分の運命を。


世界の運命を背負う『神子』。



誕生日。

それはゼロスにとって、生まれてきたことを後悔する日。

大切なものを守ってこれなかった、自分を悔やむ日。







「…遅かったな、どした?」

ベットに腰掛けてあぐらをかいている。
部屋に入るなりしいなはまっすぐにゼロスの元へと歩みを進めた。

「あ〜♪しいなもしかして女の子の日?おまえ怪力だけど一応女だったもんな。」

笑うゼロス。

けれどしいなは何も言わない。

「お〜い…?し…しいなちゃん?」

目の前で言葉もなく俯いているしいなの顔をのぞき込もうとした瞬間。



バチン、と。



派手な音。

中途半端な体勢だったゼロスは、衝撃でベットへと転ぶ。


突然の平手打ち。


「…って〜!いきなり何すんだ…っ!?」


身に覚えのない鉄拳に、怒鳴ろうとした途端。


ふわりと柔らかい匂いを感じた。

言葉もなく、きつく。
しいなに抱きしめられていた。


「…しいな?」


「…いい大人がくよくよしてんじゃないよ。みっともない。」


気のせいか…少し掠れた、声。


「…いいかい?」


強く、抓られる頬。


「今、あんたは確かに『神子』だ。…それは変えられない。」

見つめる真剣な茶色の瞳。

「でもね…あんたは『神子』である以前に『ゼロス』っていう一人の人間なんだ。
 神子は代わりがいるけど、『ゼロス』っていう人間の代わりはいないんだよ?」

更に頬を抓る力が強くなる。

「だから…生まれてこなきゃよかったなんて…馬鹿なこと考えてるんじゃないよ。」




…見抜かれた本音。




「あ〜ぁ…ばれちゃったか。」



呟いた声は溜息交じりだった。


「誕生日、しいなにはばれないようにしてたんだけどなぁ。」


頬抓る手をそっと手のひらで包んで笑う。


「おまえに知られたら絶対怒られるだろうなって思ってたのに。」
「怒られるのわかってるならなんで…そんな悲しいこと考えてるのさ。」

抓るしいなの手から抜け出して、ベットにごろりと横になる。

「自分の生きる意味、生まれた意味…何度も見つけようと思った。」

ぼんやりと天井を見つめ、手を伸ばす。



「けど…途中で気が失せちまった。」

「…どうして?」



そう問いかけるしいなの声が悲しそうで、ゼロスは困ったように小さく笑った。


「俺が求めても、周りの人間は誰も『俺自身』を必要としてくれなかったからさ。」


『神子』だから守れ。
『神子』だから殺せ。


盾は『神子』を守る。
刃ですら、『神子』に向けられる。



『俺自身』じゃない。



「…『俺自身』が必要にされてるって、実感がわかなかったんだよ。だからやめた。」

「そんなことないよ!」


悲しそうに語るゼロスを見ることが辛くてしいなの声が自然に大きくなる。


「じゃあ。」


上半身だけ起こし、そっとしいなの手を握った。



「しいなは…俺を必要としてくれてる?」



縋るような瞳。
さっきと同じような。



一人にしないで。
傍にいて。
…自分を求めて。



少年の瞳。


「当たり前だろ?今更なこと聞くんじゃないよ!」



─しいなの言葉が嘘じゃないってわかってる。



今日だって、理由もないのにきてくれた。
傍にいることが当たり前になっていた。


けれど。


必要とされてるって『確信』がほしい。



「…じゃあ実感させて?しいなが俺を必要としてくれてるってこと。」


そういってしいなの手を強く引き寄せる。


「…!ゼロス…!」


突然のことにバランスを崩したしいなは簡単にベットへと縫いつけられた。



─卑怯な方法。



わかってる。


…こんなこと言われたらしいなが逃げ出せないこと。
拒否できないこと。



わかっているからこそ。
わざと…甘える。



「…俺のこと求めて、しいな。」



絡む視線。


言葉のない、沈黙。


戸惑う、茶色の瞳が、



─ずるい。



そう訴えて。




けれど…受け入れるようにそっと閉じられた。



拒否されなかった安心感と、
そして小さな罪悪感を感じながら。


震える桜色の唇にそっと自らの唇を重ねた。









→NEXT 3<under> or 


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次号、裏突入予定。
裏読まなくても話が続くようにしますのでご安心を。
しいなにだからこそ見せる弱さ。
認めている存在だからこそ、曝け出せる自分。

しかし・・・この話、時期はいつだ!?(←おい。

◇ 砂 ◇