【誕生日.4】




気づけば外は夕闇へと移っていた。


「…。」


眠ってしまったのか、とゼロスはだるい体を起こしかける。
そのとき下へと引き戻される力を感じ、思わず小さく声をあげた。

「いって…ひっぱってやんの…。」

白い手が赤い髪を放すまいとして掴んでいる。


しいな。
自分の隣で小さく寝息を立てて、ぐっすりと眠ってる。

無防備な寝顔は、いつも気の強いしいなからは想像もつかないほど可愛い。

「隠密のくせに。…隙ありすぎ。」

そういいつつ笑って、赤く腫れた瞼にそっとキスをする。



疲れきった顔。
肌に残る、薄紅の印。


「無理させちまったな…。」

わかっていながらそうしたのは自分。
今更、少しの罪悪感。



「ごめんな…。」



思わず呟いた、謝罪の言葉。
そっと黒い髪を撫でる。



「…どういう意味…?」



その手を、ふいに掴まれた。



「しいな。…起きてたのか。」
「あたし…『ゼロス』の力になりたかった。『ゼロス』がほしかった。
 だから…あたしが自分で望んだことだよ。」

そっと指に口づけられる。

「第一望んでないなら力ずくで逃げ出してるって。あんたのこと殴ってでもね。」

優しい笑み。

「だから、あたしの気持ち無駄にしないで。『ごめん』なんて言葉…ほしくない。
 あたしには…あんたが必要なんだから。」




もしも。
俺の生まれてきたことの意味が。
大切な人の傍にいること。
大切な人を守ることだとしたら。

俺は、生まれてきてよかった。


今なら、そう実感できる。




「随分と今日は素直じゃないの。いつもそれくらい素直だと可愛気があるんだけどなあ。」
「あんた…!人がまじめに…!」
「うおっ!いきなり怒るなって!しかしさすが俺様〜♪しいなにばっちり愛されてるなあ♪」
「!…ば…馬鹿っ!」


顔を真っ赤にして俯いてしまうしいな。


いつも。
笑って、怒って、そして泣いて。
心にそっと温かさを滲ませてくれる。


大切な人。


「なあ、しいな。」
「な…なにさ。」


「…誕生日のお祝い、言って?」

途端、しいなが小さく吹き出した。

「…まったく。さっきまで嫌いだったくせによく言うよ。」
「いいじゃん〜、しいなにはちゃんと言ってほしいの。」
「はいはい、しょうもないヤツだねえ。」

そういってしいなは呆れたように笑った。



「…HAPPY BIRTHDAY…Zelos.」



贈られる、キス。



好きな人に祝福される、誕生日。

生まれてきてよかった。
そして…これからも生きていこう。





君と共に。













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はい。「誕生日」連載終了です。
結局最後は甘々で終わるんかい自分、(いつものことだ)
しいなってなんだか母性愛が強そうです、
料理マスターの称号も「食の達人」→おふくろの味を・・・って書いてあるし。
気づけば支えていて、そして支えられている。
そんな二人の関係が好きです。

◇ 砂 ◇