【独占欲】






「な、何だよ、あたしは別にロイドのことが好きだなんて…」
「へいへい。行くぞ、アホしいな。」
「何だい、アホ神子!」


言葉を遮ったのは、そのわかり易すぎる言い訳を聞きたくなかったから。



─、嫉妬。



そんな単語がぴたりと当てはまってしまう俺の様子すら全く気付かないおまえの鈍さに、

…珍しく苛々してみたり。












「ちょ、そんなにひっつくなってば!アホ神子!」
「は〜いはいはい、アホで結構。とっとといくぞ〜アホしいな〜。」
「き…っきゃああっ」


一台のレアバード。
しいなの後ろに乗り、ハンドルを握るしいなの手に己のそれを重ねる。
しいなを囲い込むような体勢。
それに文句をつけたしいなの言葉を「アホ」返しで封じ込め、
…しいなに確認もせず急発進した。

「バカ!危ないじゃないか!」
「へ〜きへ〜き〜。」
「平気じゃないよ!…ってこらっ!ゼロス!手、解きなっ!」
「いいじゃないよ〜。これくらい。」
「き、気やすくレディの手を握るんじゃないよ…っ!」


異性と手が触れ合う…しかも皮製の手袋越しだというのに過敏に反応し意識するしいな。
手は緊張からか手袋のわずかな隙間からでもわかるほど熱を帯び始めて、
しいなが異性に対してかなり免疫がないのだと告げる。


「ど…どさくさに紛れて…っ!」
「だってチャンスだろ〜?しいなにこんなに密着できるなんて俺様幸せ〜。」


─、しいなは振り解いたりしない……というより絶対振り解けない。
さすがにしいなも空中で無理矢理振り解けば危ないことくらい、理解している。
それがわかっているからこそ、調子に乗ってさらに強く握り締める。



普段以上に密着する体。
必要以上に肌を露出しているから、互いの肌同士が直接触れ合う。
そのことが更にしいなを困惑させているのだろう。


「……っ」


自然と、ハンドルを握る力が強くなった。


「ふふーん。さすが俺様、ナイスチョイス。」
「あ…っあんた…だからこんな露出が多いの選んだっていうのかい!?」
「"だから"ってなによ?俺様、しいなに似合ってるって思っただけだけど?」
「嘘おつき!このエロ神子!」
「なになに〜?しいなちゃん、意識しまくり?」
「ば…馬鹿!そんなんじゃないよ!」


あ〜…。
異性を意識して反応するなら、俺様の本当の想いにも過敏に反応してくれないかねえ。









鈍いしいなは俺がどれだけ想いを寄せているか、気付いていない。

確かにはっきりと告白した訳ではないし、日頃から色々な女性に声をかけているから信用が落ちても仕方ない。

だが信用云々の前に、まったく気付かないというのはどうしたものか。


明らかに他の女性への態度とは違う接し方、態度、スキンシップ。
…周りの人間すら、その違いに気付いてるというのに。










「なぁ、しいなはこうやって男と二人乗りしたこと、ある?」
「え…?あ…あたしは…。」


わざと異性を意識させるような話題ばかりを振って。
しいなが返答に困るのもわかっていて。
それでもなんとか返答しようとしいなが唇を動かした矢先、





「そっか〜。あるのかぁ。」





…なんて、返答する余裕も持たせず決め付けた答えを投げ付ける。


「ゼ…ゼロス…っ勝手に…」
「そっかぁ〜。しいなもとうとう男と二人乗りかぁ〜。大人の階段の〜ぼる〜♪ってやつ?」
「な……バカ!」



自分でも意地が悪いとは思っている。
けど、聞く前から、答えはわかってるから。








ロイドと。
ハイマから救いの塔までの、ほんのわずかの距離の二人乗り。








実際に自分が見たわけじゃない。
仲間に聞いて、情報として知っているだけ。



…けれど、わかる。



短い時間でも、おまえにとってはロイドを近くに感じた大切な時間。


俺以外の男と過ごした、幸せな時間。
それが、…………酷く気に入らない。







子供みたいなやり方だとは思う。
けど、それだけしいなを強く想っているからこそ、生まれる独占欲。


俺の選んだ服を着させて。
俺とお揃いのアクセサリーを身につけさせて。


俺だけのものにしたくて。


…なのに、しいなの心は、俺の方を向いてはくれなくて。






だから。





「─、忘れて。」

「……え?」





顔だけ振り返ったしいなの肩口に顔を埋めて。
片手でしいなを抱き締めて。






「今は、その男のこと、忘れて。」


誰かなんて明白なのに、敢えて名前は出さずに。



…しいなに"ロイド"のことを考えさせて、それでいて"ロイド"を忘れて、なんて告げて。



挙げ句の果てには。



「俺様とデートしてるんだから、俺様のことだけ考えて。」



……なんて、勝手な。





「ゼ…ゼロス…っ」
「忘れて、しいな。」



















「……きょ…っ」

「……きょ…?」



突然、しいなから微妙な声が聞こえたので、思わず繰り返してしまう。
するとしいなはたたみかけるように早口で喋りだした。





「…今日だけなんて中途半端なことできるわけないだろ!馬鹿!アホゼロス!」





ぱあん!…………、と。

頬に一発。
真っ赤なるほどの平手打ち。





「いってえ〜…っちっくしょ〜…。…しいなのけち…。」



頬をさする俺様を睨みつけるしいなの視線は、厳しかった。



……けれど。







「けちとかそういう話じゃないだろ!第一そんな今日だけのつきあいなんてあんたに失礼じゃないか!」








………怒るように告げられた、その言葉の意外性に気づいた。













自然と、笑みが浮かぶ。




…そうだった。
なんてらしくない。
嫉妬のあまり、見境がつかなくなっていた。


曲がったことができないしいなだからこそ、好きになったんじゃないか。
中途半端を嫌うしいなだからこそ、好きになったんじゃないか。
そんなしいなを好きな自分は、
しいなの言うとおり……中途半端な答えじゃ、満足できないんじゃないか。






突き放すような言葉も、態度も。
しいなが自分の想いを理解し、大切に思ってくれたからこそのもの。







─、それならば。




「…じゃあしいなちゃんの心がずーっと俺様を向いてくれるよう、俺様頑張っちゃいますよ。」
「な…っ」
「諦める気なんてないし?それに、気長に待ってるのもそろそろ疲れたし。」




理解してくれたのなら、
もう、ごまかさない。




「ロイドのことなんて考えられないくらい、しいなを俺様で埋め尽くしてやる。」
「…っ!」




ちゅ、と、

首筋に軽く口付けた。



















「のわあああぁっ!」


突然急加速したレアバード。
…殺されるかと思った。



「あ…あぶねーだろっ!」
「あ、あんたが変なことするからじゃないか!」
「ば…っ馬鹿!ちゃんと前見…っ」
「馬鹿ゼロスっ!エロゼロスっ!セクハラゼロス!」




夜空に響く、大声。
ふらふらと飛行するレアバード。







あ〜あ。

この様子じゃ、
…まだまだ、蛇行運転が続きそうだ。









ドライブも。
俺様の恋愛も。


















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葉月みんと様よりいただきました10000hitリクの「ライダー服」ネタです。
む…難しかった!かなり…っ!
イベント内容的にもゼロ→しいだとは決めていたのですが…っ!
これじゃ「ライダー服」なんてほんと少ししかでてきてないじゃないか!!
な…長いわりに…まとまってないし…(オロオロ)
葉月様!ご要望に副えない品でしたらごめんなさい!返品可です!
よろしければお持ち帰りくださいっ!

◇ 砂 ◇