「しいな、今日は俺様と楽しもうぜ〜!」


その言葉にちょっと期待感を覚えながら、あたしは皮肉をいいつつ彼に頷きかけた。




∴ぐるぐる。∴






周りの景色がぐるぐる回ってる。
看板が見えて、なんかの着ぐるみが見えて、時々ロイドやらコレットやらが見えてる。


でもずっと見えてるもの。
それはあたしの目の前で楽しそうに笑う赤髪の男。



「ゼロスっ!!いい加減にしとくれ!あたし…!」


「はいはい、いいからしいなちゃんも回して〜!」



ティーカップ。
遊園地の乗り物。
そんなものがあるのはテセアラのアルタミラだけ。
ひょんなことから一日遊べることになったのだ。
ロイド、コレット、ジーニアスは初めての遊園地にかなりはしゃいでいて、
この頃大変だったこともありいい息抜きになりそうだった。
が、実はあたしはこれは得意じゃなかったりする。



凄い速さで回っていた景色が止まった。
電子音がする。


「ふ〜、どうよどうよ?俺様かなり凄かったろ?」


「ああ、そうだね!まったく…もうあんたとは乗らないよ!」


景色は止まったが頭はまだ混乱しているらしく、足がよろめいた。後ろのゼロスにぶつかってしまう。
あわてて近くの柱に捕まった。



ヤバイ。
あわてて口に手をあてた。



「おぃおぃ…しいなちゃん、もしかして酔った?」


「…ベンチ行ってる。」



少し言葉を発したゼロスを無視し、走った。


忍でありながら情けないと本当に思う。
しかし、昔からあの手の乗り物は弱いのだ。それに乗る回数もわずかだから慣れることもない。
ゼロスに誘われ、自分も少し乗りたかったのもあり乗ってしまった。
もしかしたら大丈夫かもしれない、と。
ベンチに座り込むと自然にため息が出た。
今更だが自分の愚かさに。


「…なんで乗っちゃったんだ…あたし。」


「しいなさん、大丈夫ですか?」



プレセアが気付いて顔を覗き込んで来る。
まだ頭はぐるぐるしていたが、笑って見せた。
またそれに気付いたロイド達があたしの周りに来てしまう。


「しいな、どうしたんだ?」


「大丈夫、ただちょっと酔っただけさ。」


「顔色悪いね、大丈夫?」


「大丈夫だよ。少し休んだら行くから。ほら、あんた達は遊んでおいでよ。」


あたしが何度か戻るように言うとやっとロイド達は戻っていった。
乗り物酔いで心配されるなんて、自分自身にあきれる。

その時何か冷たい物があたしの手に触れた。



「ほれ。」


「…あ、ありがとう。」


「いえいえ、どーいたしまして。」



ゼロスから飲み物のプレゼント。
あたしはそれを受けとると、ゼロスのために少し席をずれる。ゼロスは少し前のめりにそこに座った。


「ごめんな。」


「なんであんたが謝るのさ!…あたしあの手のには弱くて…」


そういいながらゼロスからもらった缶を開ける。
ゼロスは同じ物を持っていたが、開けずにそれをポケットにしまった。
わかっていたのに乗ってしまった。非はあたしにある。



「本当にあたしってこういう所に縁がないんだね。…っていうかあんたもここにいなくていいんだよ?」


「なーにいってんのよ。俺様にも責任、ちょっとはあんでしょうが。」



確かに、ないとはいいきれない。だが自分のせいでもあって責めるなんてことはできなかった。
でもゼロスが責任を感じてくれていることに多少嬉しさを感じ、表情が緩む。
しかしだからといって本当に責任をとらせるなんてことはしたくなかった。



「…そうかもしれないけど、あたしは別に」



「…最初に言ったろ?俺様の今日の相手はしいななの。今日はしいなとしか楽しめない、楽しみたくないわけ。」



久しぶりに見たゼロスの本気な顔。少し表情がこわばった。
それに、とゼロスは続ける。



「ここにはアレしかないわけじゃないじゃないし。
そろそろ酔い覚めた?」


聞かれて、あたしは頷いた。完璧とはいえないが、もう気持ち悪さはない。
それを見るとゼロスはニカッと笑った。もう真面目なゼロスは欠片もなかった。


「じゃ、行くか!」


「え?ま、まだあたしこれ飲み終ってない…」


手を捕まれ、走り出しそうなゼロスを必死に止めた。するとゼロスは缶を取りあげ、一気に飲み干した。


「なっ…//」


頬が染まり、一発殴ろうかと思い、とどまる。ゼロスが走り出したのだ。



「はい!じゃ、観覧車まで競争!」


遠くのゴミ箱に缶が入る音がした。


観覧車に乗るとゼロスはポケットからさっきのジュースを取り出した。


「これでさっきのはチャラな?」



普通なら許さない所だが、今日は違った。


「しかたないねぇ。次はないよ?」



そういってあたしは缶ジュースに手をかけた。










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うわああああああ。
片床様よりサイト10000hitお祝い小説を頂きました!!!!
だ…大興奮ですよ!憧れの片床様に自分のサイトをお祝いしてもらえる時が来るなんて!
しかも素敵ゼロしいですよ!感動です!
さらりと間接チュウをやってのけるゼロス君が最高です!
そして独占欲ばりばりなゼロス君に更に万歳!
片床様素敵小説ありがとうございます!
これからもサイト頑張ります!(←決意)

◇ 砂 ◇