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正義 justice
愛
love
セイギってなんだ?
アイってなんだ?
言葉を知らない訳ではない。
ただそれが自分にとって何を表すものなのか
それがわからない。
自分の進むべき道を決めようと路頭に迷う今
セイギのため
アイのため
そんな言葉が脳裏を掠めたわけで。
目の前に置かれた辞書に手を伸ばし、ページをめくってみたところで
部屋の扉を遠慮がちに叩く音がした。
あー
この叩き方はセバスじゃないなと判断し
自ら扉を開けてやる。
遠慮がちに扉を叩いた主…しいなは伏し目がちに立っていた。
「なーによ。お前にしては珍しく弱々しい挨拶じゃねーの。」
そう言ってもしいなは伏せた目を上げない。
「いつもなら、扉蹴破って不法侵入するくせに。」
そういって笑い飛ばしても、いつものパンチは飛んでこない。
とりあえず軽く会釈して部屋のなかに促すと、何の抵抗もなくしいなは部屋に入り
さっきまで俺が座っていた席の目の前の椅子に
すとんと腰を下ろした。
そう。
伏し目がちのまま。
さっきの席に戻って再び辞書に手を伸ばしかけた時
「あんたに、大切な話があるんだ…。」
小さな声で
それこそ消えそうな声で
しいながそう告げた。
伸ばしかけた手を戻し
そのまま頬杖をついて
先の言葉を静かに待つ。
大切な話。
俺様、告られちゃったりする?
そんなおちゃらけた思考を振り払い
伏せられたままのしいなの瞳をみる。
睫毛なげー。
黙ってると結構可愛いかも?
そんな呑気なことを考えながら。
固まったままのしいなから視線を外し
再び手を動かそうとすると
「あの…さ…。」
再び小さな声が聞こえた。
「ん?」
そう返事をしながら手に取った辞書をめくろうとすると
「…人が話そうとしてるんだから本なんて見るんじゃないよ。」
あのぅ。
俺様、さんざんしいなのこと見つめて待ってたんですが?
黙って『はいはい』と辞書を戻し、再びしいなを見つめる。
今度はわずかに視線がぶつかった。
が、一瞬で逸らされた。
「…あんまり見るんじゃないよ。」
どっちだよ。
見てほしいの?
見てほしくないの?
わかった。
この対面式がいけないのか。
「よっこいせっと。」
仕方なく俺は席を立ち、しいなの横の椅子に席を移した。
見つめることはせず
本を見る事もなく
その『大切な話』とやらを聞くために。
しばらく続く無言の空間。どれくらい続いたのだろうか。
ちらりとしいなに視線を落とすと再び視線がぶつかる。
が、またしても一瞬で逸らされた。
「…あのなぁ。目と目で分かれとか言うんなら俺様には無理だからな?」
そういうと真っ赤になって
「そんなんじゃなぃ…。」
弱い返答。
調子狂うなぁ。
「じゃ、何?」
話しだす様子がないので、あえてこちらから問うてみる。
「…あんたは…何処に行こうとしてるんだい?」
「は?」
「あんたがいなくなりそうで…どっかいっちまいそうで、あたし!」
「声でけーよ。ロイド君達に聞こえちまうぜ?」
「あっ…。」
しまったとばかりに再びうつむく。
黙ってる時間が長かったからだろう。
口火を切ったら感情が暴走したようだ。
「…俺様がいなくなったら、しいなは淋しい?」
「…淋しくなんかない。」
「あっそ」
「…でも」
「でも?」
「あたしがいなかったら、あんた何しでかすかわかんないじゃないか。」
「ひでぇなぁ。」
軽く失笑してみるも
しいなの声のトーンは変わる事無く。
「やっぱり、どっかいこうとしてたのかい?」
間違ってはないわな。
間違ってるかもしれないが。
それは俺自身が路頭に迷ってるからなわけで。
あえて答えないでいると、しいなは立ち上がり
さっきまで俺が座っていた席の辞書に目を落とす。
「…正義。」
「あぁ?」
どうやらちょうど、そのページが開いていたらしい。
他にも単語は載っているだろうに
よくもまぁ、その単語に目が行ったもんだ。
「あんた、何調べてたんだい?」
「正義と愛は必ず勝つ。」
「それ、ドワーフの誓いじゃないか。」
「読んでくんね?」
「え?」
「正義。」
困惑した表情を向けたしいなだが、俺が視線を逸らさなかったので仕方なく読み出した。
「―正義。筋道に合った正しい事。」
「筋道は?」
「―筋道。物事の道理。」
「道理。」
「―物事の正しい筋道。」
「戻っちまったじゃねーの。」
「あんた、正義の意味が知りたいのかい?」
「ま…そんなとこかな。」
「何でまた…」
「俺様の正義が見えねーと、俺様誤った判断しそうだからよ。」
誤った判断。
やり直しはきかない。
だから
「俺様流の正義が知りたいわけ。」
しいなは勢い良く辞書を閉じると、事もあろうかその分厚い辞書で俺の頭を殴った。
「いっ!」
「馬鹿じゃないのかい!あんたの正義が辞書に載ってるわけないだろっ!」
「俺様の正義を見つけるには世間一般の正義をだな〜」
「知る必要なんてないじゃないか!」
「はぁ?」
「あんたの正義はあんたの信じる事。信じる事が正義だろ?」
手にもった分厚い辞書を机に無造作に投げ捨てて、しいなはそういった。
「じゃあ、愛は?」
「あ…愛ぃ!そんなのあたしに聞くんじゃないよ!」
後ろを向いてしまったしいなをみながら、俺は無造作に置かれた辞書にもう一度手を伸ばす。
「―愛。大事にする、大切に思う気持ち…。」
「あんたまた辞書!」
「わっかんねー。」
「当たり前じゃないか!辞書で気持ちが分かったら困ることなんてないよ。」
「あ!」
「な…なんだい…」
「俺様、こっちならわかるかも。」
「こっち?」
そういって俺はもう一つの愛の意味を読み上げた。
「―愛。可愛がる、可愛がる気持ち。」
「へぇ。」
「俺様、しいなのこと可愛いと思った。これって愛かぁ〜。そっかぁ〜。」
「なっ!何勝手なこと言ってるんだい!」
「俺様の愛はしいなかぁ。」
「ちょっ!やめとくれよ!殴るよっ!」
「俺様はこれが正しいと信じる。」
「…。」
「つ〜ま〜り。俺様の正義もしいななわけだ!」
勢いがついたしいなのこぶしがストレートに左頬に入った。
「いたぃっ!辞書より痛いっ!」
「まったく!付き合ってられないよ!」
言い捨てるように出ていこうとしたしいなが、扉の前で立ち止まった。
「あたしが正義でも愛でもいいから、何処にもいくんじゃないよ。アホ神子。」
そう小さく
消え入るような声で告げて
しいなは部屋を出ていった。
まいったなぁ。
もう路頭に迷えないじゃねーの。
そんな風に言われたら。
適当に言った正義と愛だけど
それもあながち間違いじゃないかもしれないと
そんな風に思って
俺は路頭に迷っていた自分の意志を固めざるをえなくなった。
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おおお。。。。辞書でくるとは…。
しかしだいぶ真輝どんもゼロしいに浸かってきましたなあ。。。うひVv
しっかし・・・しいなさん殺し文句ですなあ・・・。
どこにもいくんじゃないよ・・・この言葉がゼロスにとってどれほど効力のある言葉か・・・。
しいなさん、プロポーズっすよ、それ(萌)
真輝どんツボついた小説ありがとう!!
これからもゼロしいをたくさんよろしくううう!
◇ 砂 ◇