【りんごちゃん】






「あんた、さいてーだよ!!!」


突然のしいなの怒りにゼロスが驚く。




ここは由緒あるワイルダー家。
そしてもちろんゼロスの部屋。




「なによ、なによ。なに怒ってんのよ」
「信じられない。『お前だけだ』とか言っといて…」
「?俺様にはしいなちゃんだけよ?」
「嘘言うんじゃないよ!!」
「だからぁ、何怒ってんのよ〜」
「…あたしが何で怒ってるのか知りたかったら自分の胸と机の引き出しに聞いてみるんだね!!!」
「引き出し?」
「帰る!!!」



そういって扉を開け放ち、びっくりした執事に目もくれず、しいなは大きな屋敷を後にした。


「ゼロス様、どうなさいました?」
心配した執事がひょっこり部屋をのぞくと、
ゼロスは机の引き出しからひとつのネックレスを出していた。

「あいつ、コレ見て怒ったのか…」

それは紛れもない女性用のネックレスだった。





「まったく!あたしだけとか言いながら引き出しに大事にしまってるあれは何だってんだい。」

怒り任せに草をけり、勢い良く大またで歩く。



たいそう大事にしまってあったそれは、とても高価なもので。
ゼロスの瞳と同じアイスグレーの石がついていた。


「誰かにあげるか、誰かの忘れ物って事だろ?忘れ物だとしたら…」


あたし以外に誰か部屋に来てるって事じゃないか!!


そんなことを考えていると更に腹が立ってくる。
「…あー!!まったく。何あたしは動揺してるんだい!」



ゼロスの浮ついた話なんて珍しいことじゃない。
前からあったことだし。


それでもゼロスは
あたしだけって言ってくれたから…
だから…



そんなことを考えていたら、今度は怒りはどこへやら
涙があふれてきた。
「あたしだけが真剣に受け止めてて…馬鹿みたいじゃないか。」




引き出しにあったそれは
アイスグレーの石が輝いて
とても綺麗で



でも
しいなにはとても冷たい色に見えた。




「ばか…」

小さくつぶやくと
涙が一気にあふれ出す。



たかがネックレスを見つけただけ。
それが大事にしまわれていただけ。



それなのに。



たかが…

されど…


それはこんなにもしいなを苦しめる。





「ばか…」

もう一度小さくつぶやく。
そして歩みを止めて、そっと後ろを振り返る。



追ってくるわけがない。
突然怒り出して、勢い任せに部屋を飛び出て。
そんな女を追ってはこない。



そうわかっていても
目の前に広がった草原に赤い髪を捜した。



「…ばかだねぇ…あたし」
いるわけないのに。




今頃ネックレスの主と話でもしてる?
それとも・・・







「しっいなちゃーん☆」

聞き覚えのある声は頭上から。
声の主は優雅にレアバードで空中遊泳。

「!!」

草原ばかりを探すほど動揺していたしいな。
レアバードなんて代物は
頭の片隅にすらなくなっていた。


ゼロスはゆっくり降り立つと、しいなの前に立つ。
そしてポケットからネックレスを取り出した。


「俺様、ちゃんと引き出しに聞いたぜ?」

そんなことを言いながらへらへら笑うゼロスに
しいなは再び怒りをこみ上げる。

それを瞬時に察したゼロスは
「まぁまぁ、怒るなって。ちゃんと話すからよ」
そういって、近くの岩場にしいなを座らせた。



そしてアイスブルーのそれをしいなの手に握らせる。



「この石、俺様の瞳の色に似てんだろ?」
「あぁ…」
「それな。母親の形見ってやつよ」
「え?」
「俺様が生まれた時に、父親に贈られたらしいぜ?」



俺様の瞳の色の石。



そういって視線をネックレスに移す。




「あたし…」
「そぉ。しいなちゃんは完全なる誤解をしたのだな」


うははと笑ったゼロスの顔。
なんだか早とちりをしてしまったしいなは一気に赤面した。


「…ご…めん。」
「なに?きこえねーよ?」


そういってしいなの顔を覗き込む。



「あたし、あんたのこと信じてなかったみたいだよ」
「まぁ、俺様も普段から信じてもらえないような事してるし?」
「でもあんたは、あたしだけって言ってくれたのに…」
「しいなちゃんはヤキモチ焼いちゃったわけだ」
「やきも……!!そんなんじゃ…」
「ないっての?へー?ちがうんだ?」



更に覗き込むゼロスから視線をはずし


「……ちがわナイ……」
また小さくつぶやく。


「でっしょー?」
その言葉と同時にしいなの頬に軽くキスをする。



赤かった顔が更に赤くなったのがわかった。

「ちょっと!なにすんだい!!」
ムキになるしいなを見てうひゃひゃと笑い、

「しいなはそのほっぺたがアクセサリーみたいだよな〜」
更に赤面させんばかりの言葉を並べる。


「アクセ…」
「それだけで十分だ。うんうん。」
一人で納得してうなずくゼロス。





「さぁ、帰るか。」
「帰るって…」
「決まってんだろ?屋敷にだよ」
「え?えぇ?」
「もちろんしいなも『帰る』んだぜ?屋敷に」


その言葉を深読みしたしいな。


「エロ神子ー!!」
「あいたー!!!」







外から聞こえる大きな喧騒に
セバスチャンが眉をひそめる。


屋敷の主が戻ってきたことを感じ
すっと扉の横につき、そして扉を開けた。
そこにはそろって立つ二人の姿。


「お帰りなさいませ。ゼロス様。しいな様。」









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りんごちゃん!りんごちゃんですってよ!聞きました!?
なんて可愛いんでしょう!ほっぺにちゅですよ!←大興奮。
アクセサリーでここまで違うものになるとは思いませんでした。ラヴい。
最後のセバスが好きです。

しかしお母さんの形見かぁ。
更に奥の深い話が出来そうです。

真輝さまいつもありがとう!!!←堀○孝○風。

◇ 砂 ◇