【春】Ver.2
春の匂いがする。
あったかい風が吹いて。
草木が鮮やかに色染まる。
今年もまた、この季節を迎える事ができた。
君と、一緒に…………─────────
「────、」
声がする。
太陽の温もりと、頬を撫でる暖かい風に、意識が落ちそうになっているときだった。
「────、」
何度も、繰り返し。
普通は、睡眠を妨害されるように何度も声をかけられれば、気分を害す。
けれど、君だけは違う。
君の声が聞こえるのが嬉しい。
君が近くにいるという証明だから。
君が俺を必要としてくれていることの証明だから。
穏やかな陽気のおかげか。
普段の辛辣な口調じゃなく、とびきり甘く、柔らかい声で。
「ゼロス。」
呼ばれる、名前。
ああ、なんて気持ちいいんだろう。
君と共に歩むようになってから毎年。
この穏やかな陽気……春という季節が待ち遠しくてしかたなかった。
人の心を穏やかにさせる季節。
この季節が一番好きだと君は言う。
そうやって穏やかに笑う君が好きだと俺は思う。
君と一緒に君の好きな季節を迎えることができて、俺はこの上なく幸せ者だ。
「寝ちまったのかい……お茶にしようっていったのに……」
髪に触れていた手の感触が、ふいになくなる。
気配が俺様の近くから遠退きかけた。
それが、無性に淋しくて。
「……!……ひゃあっ!」
彼女の腰に飛び掛かるように抱きついて、畳の上に揃って引っ繰り返った。
「ちょ…っゼロス!起きてたのかい!?」
「ん〜…しいなの手が気持ち良くてついつい。」
ぎゅう、と抱き締めると、君から優しい匂いがした。
さっき感じた、春と同じような優しい匂いが。
「しいな、春の匂いがする。」
「春の匂い?」
意味がわからなかったようで、茶色い瞳を瞬いた。
俺の腕に抱き留められていることに、頬を桃色に染めながら。
ああ、本当に、春っていいなぁ…………。
「ちょ…ちょっとゼロス…っお茶が……───」
「いいじゃん。しばらくこのまま昼寝しようぜ?」
春の匂いを抱き締めて。
桃色に染まった頬にそっと口付けた。
あったかい風が吹いて。
草木が鮮やかに色染まる。
その草木に負けず劣らず色濃く染まった君の桃色の頬に、
白い花びらがひとひら、照れを隠すかのように舞い降りた。
来年もまた、この季節を迎えたいと願う。
君と、一緒に…………─────────
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昨年はゼロス死亡ルートだったので今年はゼロス生存ルートで。
春はしいなの季節だと勝手に思い込んでる海辺。
昨日、上野に桜を見に行って来ました。
しいなの桃色の帯が桜吹雪の中で舞ってたらきれいだろうなあ・・・、と毎年思います。
◇ 砂 ◇