【「本物」】




「あんたはどうして誰でも構わずそーゆーことができるんだい。」



不機嫌そうな顔と、声。
そのままぷい、と横をむいてしまった。



その態度に、俺は思わず顔を綻ばせて、喜んでしまう。



だって、睨み付けてきた瞳は明らかに「軽蔑」ではなく「嫉妬」のもの。


今まで呆れて無視していた彼女が、ここ最近、俺のことをやたら気にしてる。
女の頬にキスしたことでこの態度。

まさか、拗ねるなんて。
期待してもよさそうな反応。


「挨拶だよ、挨拶。ほっぺにちゅ、は挨拶でしょ?」
「あんたの場合は猥褻で、挨拶に見えないんだよ。」


そのままイライラした口調で窓の外を見つめる。
彼女の視線の先には、先程俺が「ほっぺにちゅ」をした相手である貴族の娘が、舞い上がった様子で他の娘と話している。



得意げな表情で。



バカだねえ…ほんと、「挨拶」だっていうのに。
「本物」と「偽物」の区別もつかないなんてな。




「本物」を易々と与えるわけ、ないだろう?




「なぁに〜?しいな、やきもち妬いてくれてんの?」
「な、何馬鹿なこといってんだいっ!そんなことあるわけないだろ!」



慌てたように彼女はムキになって弁解するが、その顔はみるみる赤く染まっていく。



ほんと、正直。



「照れるなって〜。」
「違うっていってるだろ!?殴るよ!」



瞬間飛んできた鉄拳。



今までは、その照れ隠しを防御もせず、正面から受けていた。
それは、自分にとって逃げ道。
殴られれば冗談のままで会話を終わらせることができるから。
いつか彼女の前からいなくなってしまうのに、「本物」の想いを伝えるわけにはいかなかったから。



けれど、自分が「生きる」ことを選んだ今、「本物」の気持ちを隠す必要がどこにある?

逃げる必要なんて、ない。


だから俺は、飛んできた鉄拳を片手で受けとめることで自分の逃げ道を塞いだ。



「!」



普段当たるはずの鉄拳が受けとめられるという予想外のことに彼女は驚きを隠せないようだった。
その隙をついて彼女を自分のもとへと引き寄せる。


「ちょ…っ何すんだい!」


腕の中にすっぽりと収められてしまったことで更に大きな声で怒鳴る。
けれどの彼女の顔は先程よりも赤く染まっていった。
そして、動揺のあまり潤む瞳。
俺の服を握り、震えている白い指。



─、嫌がってない。



期待が確信へと変わる。



今なら伝えられる、
秘めてきた想いを。


だからもう、放す気なんてない。



「嫉妬なんて、しなくていいぜ〜?しいなは別格だからな〜。」



伝える「本物」の気持ち。
けれど。



「…どうせ他の女にも言ってるくせに。…そんなこと軽々しくいうんじゃないよ。」



彼女は不機嫌そうに、そしてどこか寂しそうに呟いた。



予想通り、信じてもらえない。
散々彼女の前で愚行を見せてきたのだから自業自得だけど。


「なにいってんの。ほんと、しいなだけだって。」
「どうだか…。あんなに軽々しく女にひっついてさ。」
「おいおい〜、「本気」じゃないからひっつけるんだろ?俺様、本当は臆病者なんだぜ?」
「…え?」



大切だから、なかなか触れられなかったんだ。



俺の言葉に驚いたような顔をする彼女に、そっと笑いかけた。



「…しいなだけに、「本物」をやるよ。」



言葉では伝えきれない想いを伝えたい。
だから、不思議そうな表情をしている彼女の頬に手を添えて。

思いきって、唇を重ねた。



らしくねぇ。
俺、ホントに臆病者だ。
いつも女性には触れてるのに、想い人には必要以上に緊張しちまって。
情けないくらい、手が震えて。


けど少しでも想いを伝えたい。
信じて欲しい。

だから、優しい口付けを繰り返した。


彼女との初めてのキス。

初めて触れる彼女の唇の柔らかさに、馬鹿みたいに鼓動が早くなる。


どれくらいそうしていたんだろう。
緊張して、時間の感覚なんてさっぱりだった。



唇を離せば、信じられないといった彼女の表情。



「しいな。俺様の「本当」って奴、伝わった?」
「ゼ、ゼロス…っ!」
「おまえだからしたんだ。信じてくれるよな?」


熱をもつ頬に触れれば、彼女の瞳から一筋こぼれ落ちた涙。



「…馬鹿ゼロス。あんた、今日はらしくないよ。」



彼女は、濡れた瞳のまま笑った。


俺の強い部分も、弱い部分も知ってる彼女。


だから、伝える「本物」。
だからこそ、伝わる「本物」。



「なぁしいな、初キスの感想は?」
「な…!なんてこと聞くのさ!この変態!」
「だってよぉ〜しいなとの初めてのチュウなんだぜ?聞いておきたいじゃんか。俺様すっごい緊張したんだから。」

にんまりと満足そうに笑った俺に、彼女は俯いてしまう。

「そ、そんなこといわれても…。突然のことだったし…。」
「わかんなかった?…じゃあもう一回しよう〜。」
「!ひゃ…っ!何すんだい!」
「しいな〜Vv」

彼女の体をベットへと強引に縫い付けて。

「熱い愛を語ろうぜ〜っ!」
「ば…馬鹿!放せアホゼロス〜!」



暴れる彼女に何度も口付けて。
抵抗を諦めおとなしくなった体を抱き締める。

腕の中にある温もりが心地よくて、俺は自然と笑顔になった。



その笑顔は、他の誰にも与えない。



彼女のためだけの、「本物」だから。











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おはなさまリクの初チュウ。遅くなりました…。すみません。
実は奥手なゼロス君が書きたかった。
久々に書いたラブラブネタだあ〜☆
おはな様リクありがとうございました!
差し上げますのでお持ち帰りください〜☆

しかし…なんだあ?この不思議な文章は…。
なんかまとまりないですね。
おはなさますみません。
※でも返品不可です(笑)←またか!

◇ 砂 ◇