※この話はPS2発売前にできた作品です。PS2と設定が異なる部分があります。
【観覧車】
園内のにぎやかな声。
乗り物の大きな音。
そして…遠くに聞こえる海の音。
「なあなあ〜!せっかくだから遊んでこうぜ〜!」
ロイドの浮かれ気味の声が響く。
「もう、17にもなって子供なんだから…。」
呆れるリフィルにあたしも同感だった。
あたしたちが今いるのはリゾートシティ、アルタミラ。
リーガルがレザレノカンパニーの会長だとわかって、アルタミラの施設は殆ど融通が利くようになった。
そこでリーガルに施設をいろいろと案内してもらってたんだけど、
遊園地区画に着いた途端にロイドとジーニアスがはしゃぎだした。
ジーニアスはまだ12歳だしね、はしゃぐくらいが自然かも。
けどロイドは17だからねえ…周りからみれば異様な光景かもしれない。
シルヴァラントにはこんな施設はないし、当然といえば当然かも知れないけれど。
「…私は部屋に戻ります。ロイド、ジーニアス、程々になさいね。」
疲れた表情でリフィルが戻っていく。
リーガルとプレセアも戻るつもりみたい。
あたしも戻ろうかなあ。
今日はもう疲れちまったし、…ここはもうこりごり。
そう思った時。
「しいな〜、もちろんしいなはいくよな〜?」
ぼんやりと考えごとをしてたらがっしりと手を掴まれてしまった。
「ゼロス!?」
「久しぶりのアルタミラだぜ〜?いいじゃんいいじゃん♪」
走っていくロイド達の後を追いかけようと、ゼロスはあたしの手を引いた。
「ちょ、ちょっと!」
あたし行くなんていってないよ!それにここは苦手なんだ!特に…。
「ロイドくーん!まずはコースターに乗ろうぜ〜!」
ゼロスのバカ!
それが一番苦手なの知っててこいつわざと…!
必死にあたしは手を離そうとした。
「放してよ!バカ!アホゼロス!」
「なぁに〜?しいな19にもなってまだコースター怖い訳〜?」
「ちが…!怖くなんか…!」
にやにや笑うゼロスに、あたしはムキになって否定した。
実際怖いんじゃなくて苦手なんだ。
降りた後、気分悪くなっちまうから。
「意外だな〜♪ミズホの隠密がコースターごときにずっと怖じ気付いてるなんて。」
挑発的なゼロスの言葉にあたしの怒りが増す。
「あ〜もう!わかったよ!乗ればいいんだろう!?」
もう殆どやけっぱちだった。
「よぉし!じゃあ俺ら一番前ね〜!というわけだからロイド君、後ろ。」
「えー?俺も前がいいよー」
一番前!?
冗談じゃないよ!
「あたしは後ろでいいっ!」
「だめ〜、俺様一番前がいいも〜ん♪一番前は彼女連れの特等席だしね♪」
だ…誰が…!
「誰が彼女だ!馬鹿っ!!」
「…しいな、だいじょぶ?」
心配そうなコレットの声。
けれどあたしはコレットを見ることさえできなかった。
「大丈夫だよ、ちょっと休めば平気だからさ。」
青い顔を隠すように声だけ明るくした。
あ〜…かっこわるい。
コースター乗って具合悪いなんて、子供じゃあるまいし。
これじゃ前と同じじゃないか。
「今ゼロスが飲み物買ってきてくれるから。」
コレットが冷や汗を拭ってくれた。
「ん、ゼロスがいれば平気だから。コレットはロイド達と遊んできな。」
「でも、しいな。」
心配性のコレットにあたしは少し笑ってみせる。
「大丈夫。あいつにファーストエイドでもしてもらうからさ。
それにいつまでもあんたを引き留めてたらロイドに怒られそうだしね。」
「し、しいなっ。」
あたしの言葉にコレットは恥ずかしそうに顔を赤く染めた。
―…女の子らしいって、こういうのを言うんだろうなあ。
あたしだったら『馬鹿』とかいって怒っちゃうけど。
「お待たせ、ほらよ。」
「!ひゃっ」
いきなり冷たいカップを頬につけられてあたしは小さく悲鳴をあげた。
ぼんやりと考えごとをしてる間にゼロスが戻ってきたらしい。
「コレット、いってきな。ロイドあんたと楽しむのを待ってるよ。」
「…うん。じゃあ言ってくる。ゼロス、しいなのことお願いね。」
「おうよ〜、まかしとけって。
コレットちゃんをロイドに取られちゃうのはちょっと悔しいけどね。」
走っていくコレットが転ばないようにと見守ったあと。
とりあえずあたしはゼロスに一言文句を言ってやった。
「…あんたのせいだ、奢りだからね。」
ひんやりとしたカップが気持ちいい。
「でひゃひゃ。レディに金払わせる男に見える?俺様紳士だぜ?
ほら、おまえ一応レディだし。」
「ほん…っと一言多いよね、あんたって。」
でも殴り返す元気もない。
「そういやぁおまえ、前にきたときも具合悪くなってたなあ〜。」
「しょうがないだろっ苦手なもんは…苦手なんだから。」
あたしは前にここにきたことがある。
それは、世界がどうこう…なんてことになる前。
あたしは修行に追われて普通の女の子みたいに遊んでる暇なんてなかった。
だから、アルタミラはきたことあったけどここの区画は初めてだった。
慣れないあたしの手をひいて、あっちこっち案内してくれたっけ。
あのときは顔には出さなかったにしろ、
あたしも内心はロイドみたいにはしゃいで、時間がたつのを忘れてた。
そんときもコースター乗って、気持ち悪くなって。
今みたいに看病してくれたっけ。
ゼロス。
あたしの、元彼。
二人でしたデートらしいデートなんて、あれが最初で最後だったね。
大きな手が背をさすってくれた。
今みたいに飲み物買ってきてくれたっけ。
変なの。
あたし達、別れたのに。
また、同じ場所で、同じことしてるなんて。
「おい、しいな。平気か?」
現実に呼び戻される。
「あ、うん、さっきよりは。」
「そっか、ならいいけどよ。もう部屋戻るか?」
そう覗き込んできた顔を、ずるいと思う。
こういうときだけ、ゼロスは意外に優しい表情をするんだ。
前は…あたしが具合良くないからって、このまま帰ったんだっけ。
遊びすぎて疲れてたのかもしれない。
ふらふらのままのあたしをゼロスはずっと支えてくれた。
『鬼女も体調崩すのか』とか『怪力女にも弱い物があるんだ』とか。
冗談ばっかりいってたけど。
それでも支えてくれる腕の力はずっと緩まなかった。
「…平気。もう少しここにいたい。」
あの平穏な頃が懐かしい。
もう少しだけこのままいたい。
あんたと、あのときのように。
「…りょ〜かい。」
あたしの体調を気にしてるからかな?
それとも、あたしと同じように思い出してるのかな?
どっちかはわからなかったけど。
隣に座ったゼロスはいつもより言葉少なだった。
二人してぼんやりと空を見上げる。
真っ青な空。
あの日もこんな天気だった。
園内のにぎやかな声。
乗り物の大きな音。
そして…遠くに聞こえる海の音。
あのときと同じ。
あの日眠ろうとしても耳について離れなかった音と同じ。
ゼロスの優しさにふれて、胸がどきどきして、眠れなかった日と同じ音。
やだ、なに考えてるのさ。
馬鹿はあたしだ。
こんな…未練がましいこと。
「ゼロス…もう」
…『戻ろう』。
そういいかけたとき。
「おーい!しいなー!ゼロスー!」
突然呼ばれて思わず声のする方を見た。
ロイドとコレット、ジーニアスがこっちを見て手を振ってる。
今から観覧車に乗るらしい。
そのはしゃいでる姿がおかしくってあたしは笑って手を振り返した。
─あ。
そういえば。
あのときは、観覧車には乗らなかったんだっけ。
観覧車で全部のアトラクション制覇だったのに。
「「観覧車ねえ。」」
ぼんやりとつぶやいた声に、
声が重なった。
驚いてゼロスを見つめる。
そしたら。
ゼロスもあたしを見つめてきた。
ぶつかった視線。
そらすことはできなかった。
同じこと考えてる。
確信できた。
だから、思い切って口に出してみた。
「「乗る?」」
─、嘘みたい。
あんたとこんなに意見が合うなんて。
付き合ってたころは意見が合わなくて、喧嘩ばっかりしてたのに。
気づけばあたしは自然に笑ってた。
「いこう。」
ゼロスの手を引いて。
それにゼロスも笑って。
青い空が気持ちいい。
さっきまで気分が悪かったのが嘘みたい。
「なににやにや笑ってんのさ、変な奴。」
「いやぁ、積極的に手をつないでいただいて、俺様嬉しいなと。」
「あ。」
あたしは無意識の行動に驚いて手を離そうとしたけど、
それはかなわなかった。
「いいじゃん、たまには。」
握り返された手が、温かい。
まいったなあ。
女好きで我儘なあんたなんか、もう好きにならないって決めたのに。
あたしも、ほんと『馬鹿』だね。
手の温もりに安心するなんて。
走りながら『何色がいい?』なんて聞かれて。
あたしが「赤」がいいと即答したら。
あんたは「青」がいいって即答。
ほら、また意見が合わないけど。
あんたは笑った。
青いゴンドラを見送って。
ロイド達と離れるようにして。
あたし達は手を繋いだまま、赤い観覧車に乗り込んだ。
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ボルトマン術書ルートでしいなを仲間にしたとき、たらいに乗ったしいなの一言に萌え。
「アルタミラのコースターを思い出すよ…。」と呟くしいな。
…誰と乗ったの!?ゼロス!?ゼロス!?ゼロスでしょ!?
そんな訳で生まれた作品。
でもあとでアルタミラにいって発覚。
観覧車、ゴンドラの色、一色…。
ごめんなさい。
100hitキリ番のネモフィラさま、甘くしたつもりですがいかがでしょう?
差し上げますのでお持ち帰りくださいVv
◇ 砂 ◇