【きみと歩く日々 −ゼロスside−】
いってらっしゃい、ゼロス。
おう、いってくるぜ。
おかえり、ゼロス。
おう、ただいま。
毎日、毎日。
同じことを繰り返す。
嬉しかった。
待っててくれる人がいるということ。
そしてその人が自分の愛する人だということ。
愛する人が食事を作ってくれるということ。
当たり前の温もりに触れたことがない自分だったから、なおさら嬉しかった。
けれど、日が経つにつれ、それが本当に当たり前のものになっていく。
おかえり、ゼロス。
ただいま。
…ご飯は?
もう食った。…わりぃ、疲れたから寝かせて。
…、そっか…おやすみ、ゼロス。
今日、遅くなるから。
そっか…。仕方ないね。
ああ、いってくる。
ゼロス。
…何?
……、なるべく早く帰ってきてね。
正直、甘えてた。
しいなは待っててくれる。
しいなならわかってくれる。
勝手にそう思い込んだ。
待ってる辛さなんて、わかろうとしなかった。
…おかえり。
しいな…起きてたのか。
うん…。…ご飯は…食べたんだよね。
…ああ。
そっか…。
まず、『おやすみ』が消えた。
つぎは、『おかえりなさい』だった。
帰った家の灯りが消えていた。
セバスチャンに聞けば、しいなは疲れてしまい先に眠ったらしい。
そして、『いってらっしゃい』が消えた、その日。
しいなから、笑顔が消えた。
代わりに、
涙が一筋、
白い頬を伝った。
開け放たれた扉。
馬鹿。
なんで気が付かなかったんだ。
遅くまで帰りを待って。
食べるかわからない食事を作って。
広すぎるテーブルで、一人食事をとって。
それでもしいなは、笑ってくれていたのに。
いってらっしゃい、ゼロス。
おかえり、ゼロス。
おはよう、ゼロス。
おやすみ、ゼロス。
ゼロス、アスパラ残しちゃだめじゃないか。
ゼロス、こんなとこで寝たら…風邪ひくよ。
ゼロス、無理するんじゃないよ。
ねえ、ゼロス。
ゼロスってば。
…ゼロス。
早く帰ってきてね。
二人で歩いていこう。
そう誓ったあの日から、一年。
一緒に歩きだして、
疲れたら励まして、
遅れたら立ち止まって、
待っていてくれたのに。
しいなの疲れに気付かず、
立ち止まろうともせず、
しいなが引き返してから振り返るなんて。
戻ろう。
しいながいる場所まで。
また、二人で歩けばいい。
手をつないで、
たまに休憩して。
ゆっくり。
ゆっくりでいいから。
街外れに見つけた黒髪。
小さく声をあげて泣いている背中を、ぎゅっと抱き締めた。
アスパラ、ちゃんと食うよ。
ピーマンも残さねえ。
ちゃんとベッドで寝る。
早く、帰ってくるようにするから。
だから、
「…帰ってきて、しいな。」
もう一度、
一年前と同じように、
二人で並んで歩き出そう。
「いってらっしゃい、ゼロス。」
「おう、いってくるぜ。」
毎日、毎日。
同じことを繰り返す。
けれど、確実に前へと進んでる。
手をつないで、
たまに休憩して。
ゆっくり。
ほんとにゆっくりだけど。
今日は早く帰ろう。
待ってろよ、しいな。
アスパラ、残さず食べてやるからな。
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片床様のマガ1周年祝い(10月)に捧げた品物。
こちらのサイトにもアップしました。
ちょうどいい機会なのでしいなsideも書いてみました♪
しいなsideへはnovelページからどうぞ★
◇ 砂 ◇