【夏祭り.2】





「好きだ。」

それは告白。

大きな音を立てて夜空を彩る花火。

不思議。
花火の火が、何故か滲んで見えたんだ。









「惜しかったね、ゼロス。」
「ちぇ〜…ロイド君卑怯だぜ〜…。」

宣言したのに金魚すくいで負けてしまったゼロスが、口を尖らせる。

「自分の掬った金魚まで全部持ってかれてるし。」
「ひでえルール作ったよなぁ…掬った金魚は全部勝ったほうのなんてよ〜…。」

そんなゼロスの態度がおかしくて、あたしはくすくすと笑った。


「…何笑ってんだよ。」
「だって…あんたがそんなことでムキになるなんて思わなかったからさ。なんかおかしくって。」

金魚すくいに夢中になったゼロス。
それを夢中になって応援してたあたし。

なんだか…二人とも子供みたいだった。



夜店の並ぶ道を歩く。
ミズホの民以外にも解放したこの祭は、人で溢れていた。




「あ。」
「え?」




何かに気付いたように、ゼロスが立ち止まる。


「しいな、ここで待ってろ。」
「え?…どこいくんだい?」
「いいからここにいろよ。すぐに戻るから。」



そういって、人混みへとまぎれこんでしまうゼロス。


はぐれないようにとつながれていた手。
温もりの喪失感から、きゅっと握り締める。


手をつなぐだけでどきどきする。
浴衣を着て、こうして男の人と…ゼロスと祭を歩くなんて思ってもみなかった。





「おまたせ、ほらよ。」
「え?」





ぼんやりとしていたらゼロスが戻ってきて、手に何かを握らされた。
…それはピンク色の綺麗な綿飴。



「さっき食べたそうにみてただろ?」
「あ…。」



金魚すくいへとむかったロイド達を急いで追い掛けていく途中、あたしは…ふいに綿飴の前で足を止めた。
昔…ヴォルトの事件が起きるまでは、毎年おじいちゃんに連れられて夏祭りにいった。
綿飴をねだって、我儘で困らせたこともあった。
事件以来、お祭りになんていける状態じゃなかったから…昔と変わらないそれに、懐かしさを感じた。


そんな思いに、ゼロスが気付いてくれるなんて。



「あ…りがと。」



急に恥ずかしくなって、あたしはうつむいて顔を隠した。


「ふーん、素直じゃない。」
「う…うるさいっ」



顔が熱くて。
つないだ手も熱くて。
あふれだしそうになる想いをぎゅっと押さえる。




いつもあたしの些細な変化に気付くゼロス。





ゼロスのこと。
ほんとは、すごく好きなんだ。



けど、ゼロスとは「幼なじみ」みたいなもんだから。
あたしを女として見たことなんてないんだから。
ゼロスとは、…親友みたいなもんだから。


好きだけど。
今の関係を失うことが怖かった。
だからいつも自分の想いを誤魔化してた。







「…もうすぐ花火だな。」

人混みから離れて、買ってもらった綿飴を食べていたら、いつの間にかもうそんな時間だった。
花火はみんなで見ようって、約束してた。
リーガルとリフィルが席をとっておいてくれるからって。




二人だけの時間が終わってしまう。

少しだけ、淋しくなった。



「…しいな。」
「え?あ……そうだね。みんなのとこ、戻…─。」



慌てて歩き出した途端。
繋いでいた手を急に引き戻された。



「!ひゃ…っ」
「…戻らない。ここにいようぜ?」
「え…?ゼロ…─。」



呼んだ名前が途中で途切れた。



一瞬の出来事で何が起こったのかなんてわからなかった。

気付いたときには、あたしはゼロスの腕の中に捕われていたんだ。




「ゼ、ゼロス?」
「ここで、二人だけで見てようぜ。」
「え?」





今、なんて?






「あ…。」


大きな音がして、花火が上がりはじめる。
夜空にきらきらと輝く火が、ゼロスの瞳の中でも光った。


いつになく真剣な瞳。
高鳴る鼓動。



「ゼ…ゼロス…あたし…──。」



思いっきり動揺してるあたしの唇に、指が立てられ言葉を遮られたあと。


唇を、塞がれた。




う…そ。



状況にひどく頭が混乱して、動けなかった。


「…しいな。」
「ぁ…。」



信じられない。
だって。

あたしはゼロスが好きだけど。
ゼロスは親友で。
あたしは女として扱われたことなんてなくて。

けど…今の…は?




「─、好きだ。」





それは告白。







大きな音を立てて花火が夜空を彩っていく。




不思議。

花火の火が、何故か滲み始めて、優しい指がそっと目元を拭った。






あたし。



泣いてるんだ。






「…どーしたよ、しいな。」



問い掛けられて言葉を紡ごうとしたけど、涙で言葉が続かない。



代わりに、あたしはぎゅっとゼロスにしがみついた。
あたしの想いが少しでも伝わるようにって。


ゼロスは安心したように微笑んだ。
あたしも、泣き顔のまま笑った。


本当に…本当に嬉しかったんだ。




大きな音をたてて花火があがる。
言葉もなく寄り添って、あたし達はそれを眺めた。



…最後の火が消えるまで、…ずっと、眺めてた……――――――。







---------------------------------------------------------------------------------------------------

しいなに綿雨を食べて欲しかったんです。←(いきなり何
お祭りではしゃいでるゼロしいって、いいなあ〜…ということで金魚すくい。
ロイドは手先が器用だから金魚すくい上手そうだなあ。

しいなには是非浴衣を着て欲しい!絶対可愛い!

とりあえず中途半端なようですが、これで夏祭りは終了です。
でも本人燃えてるので、しばらくしたら裏とかかいちゃうかも…。

◇ 砂 ◇