【温もり】
『大丈夫だよ』、とか。
『恐くないよ』、とか。
そんな言葉なんて、欲しくない。
求めてない。
欲しいのは、
あなたが、隣にいるという、温もり。
びくん、と。
茶色い瞳が大きく揺らいだ。
見逃す訳がなかった。
その瞳が、あまりにも自分の瞳に似ていたから。
似すぎているから、手に取るように心境がわかってしまう。
空を走る光に、胸の奥が疼くのだろう。
なのに、その疼きをぎゅっとしまいこんで、笑顔を保つことが習慣になっている。
ほんと、嫌になるくらいに、似てる。
「すごいね〜!」
「ほんと、すっげーな!」
珍しい空の現象にはしゃぐ仲間の声。
それに、つられたように笑う。
本当は、
声なんて、
言葉なんて、
耳に入ってないくせに。
雷が、恐い?
雪が、恐い?
違う、だろ。
本当に恐いのは、
隣の温もりを、『失う』、ということ。
ぽん、と。
軽く頭に手を置く。
不意を衝かれ驚いたのか、一瞬だけ茶色い瞳が大きく見開かれた。
「…何?」
「なぁしいな〜。おまえ、性格はガサツだけど実はすっげー美白なのな。」
「…一言、多くない?」
「なによぉ。誉めてんだぜ?空がぴかぴかしてるおかけで、美肌が更に白く見えますよ、レディ〜。」
途端むっとした表情に変わる。
いつもだったらもう殴られていてもおかしくない。
けれど、そのタイミングを、しいなは明らかに逃した。
体が竦んでるからか。
それとも。
隣の存在を引き留めておきたいからか。
「しいなぁ。おまえ時間、空いてる?」
「へ?」
「暇なら、たまには俺様につきあえよ。」
きっちり結われてる髪をくしゃくしゃと撫でる。
『あ〜!!』と癇癪を起こした大きな声があがって、さっきのおとなしさとは裏腹、金縛りが解けたかのような勢いでボカスカと胸を殴ってくる。
『何すんだ!』とか『アホ神子!』とかいいながら。
「─そんなこといって、俺様が隣にいるの、嫌じゃないんだろ?」
囁けば、面白いように赤く染まる頬。
振り上げられた拳が、振り降ろされそうになって、
…止まった。
「─、…馬鹿ゼロス。」
ぽすりと、力の抜けた手が、胸元を叩く。
羞恥から俯いた顔を上げさせれば、渋々負けを認め、拗ねたような表情。
けれど、茶色の瞳に映っていた恐怖の色が、さっきより少しだけ、減っていた気がした。
そのことに内心安堵したってーのは、……秘密の話。
『大丈夫だよ』、とか。
『恐くないよ』、とか。
そんな言葉なんて、欲しくなかった。
求めてなかった。
欲しかったのは、
大切なあなたが、今、自分の隣にいる、
この温もり。
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この間(8/17あたりでしたっけ?)海辺の家の付近は
雷が恐ろしいほどに落っこちてました。
新幹線止まって会社から帰れないかと思いました…。
雷といえばヴォルト。
ヴォルトといえばしいな、でしょうということで。
ヴォルトがトラウマなら雷が怖い可能性も…なんて想像の産物です。
◇ 砂 ◇