※ドラマCD3巻を聴いていないかたはネタバレ注意ですので読まないでください!
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【傍に】








「テセアラの神子が死んだ!」




辺境の地イセリアを訪れたとき。
突然、村の入り口から聞こえた声。



何?
なんていってるの?



「テセアラのマナの神子が死んだ!」



聞こえてる。
聞こえてるのに、理解できない。



テセアラの、神子?

神子が、どうしたって?


テセアラの神子っていったら『あいつ』のことじゃないか。



ゼロス。



ゼロスがどうしたって?






「ゼロス・ワイルダーが死んだ!」






死…んだ?




嘘だ。
そんなの、嘘だ。

嘘に決まってるじゃないか。



だって、あいつは馬鹿だけど、強いんだ。

それはあたしがよく知ってる。
それなのに。

死ぬなんてこと、あるわけないだろ?




あいつは、やっと自由を手に入れたんだ。

神子って地位に縛られることも無くなったのに。
死と隣り合わせっていう恐怖に縛られることも無くなったのに。


やっと。

幸せそうに笑うようになったのに。




















真実が知りたくて、イセリアからメルトキオへと引き返す。

この目で確認するまで信じたりしない。



あいつは強いんだ。
そんなに簡単に死んだりしない。
あたしが一番よく知ってる。


だから、絶対に何かの間違い。

どうせ、
『俺様死んだふり〜』とか言って抱きついてくるに決まってる。


『しいなの爆乳で労って〜』とか。
『しいながキスしてくれたら起きるぜ』とか。


そんな、冗談ばっかり言って。
そしてまた幸せそうに笑うんだ。




絶対に。
絶対に。
絶対に間違いだって。




お願いだから。

間違いだって、言ってよ。




















大きな鐘が。
人々の泣き声が。
馴れ親しんだ街に響く。

喪服の人の行列。
その人々の間をゆっくりと運ばれていく棺。





なんでみんな泣いてるのさ。
なんで喪服なんて着てんのさ。



お願いだよ。

間違いだって言って。



だってあんたはあんなに強くて。
どうしようもなく馬鹿で。

下品で。
スケベで。
お調子者で。



けど。

本当は、寂しがりやで。
誰よりも人の心に敏感で。


そんなあんただからこそ。

あたしはあんたのことが好きだったんだよ。




「ゼ…ロス…。」


涙がぼろぼろと零れだす。



いやだよ。
信じたくないよ。




置いていかないどくれよ。




「─…おいっ、あんた顔真っ青じゃないか!大丈夫か!?」



誰かがぐらついたあたしの体を支えてくれたけど。

返事をすることもできずにあたしの目の前は真っ暗になっていった…─────。






















─…な、…いな。



誰?

誰かがあたしを呼んでる。



─…いな、しいな…起きろって。




この声は。

ゼロス?



そっか。
あたし気を失っちまって…夢を見てるんだ。





─しいな、おい…起きろって。




生きてるときには絶対に言ってやらなかったけど。
…ほんとあんたって、いい声だよね。


柔らかいテノールが耳を擽る。


信じられないよ。
もう夢の中でしか、呼んでもらえないのかい?


もっと名前、呼んでよ。
『しいな』って。






「──、ゼロス……。」






途端、目の前が真っ白になる。
あんまりにも眩しいもんだから、思わず目を閉じちまった。



ああ…夢から覚めちまったのか。
もっと名前…呼んでほしかったのに。







「─、しいな。」







─、え?





はっきりと聞こえた声。


間違えるわけがない。
この声はあたしが大好きな声。



「…ゼロ…ス?」




なんで?
どうしてゼロスの声が…──




そっか。

きっと、まだ夢から覚めてないんだ。




「しいな。」



赤い髪が目の前でふわりと揺れた。





「…成仏できなくて…戻ってきたのかい…?ゼロス。」






罵声を飛ばしてみたものの、それとは裏腹に、また涙が溢れてくる。
いつもより優しい、ゼロスの顔。
なんて、穏やかなんだろう。



「…でも、夢だとしても…会えてよかった。」



夢でもいい。
想いを伝えられるなら。
後悔だけはしたくないから。


「あんたに伝えたくて、けどずっと…伝えられなかったことがある。最後に言わせておくれ…。」


何も言わずにただ優しい表情のままあたしを見つめるゼロス。





「あたし…あんたのこと、好きだよ。」





ずっと。

今までも。
これからも。

誰よりも、あんたのことが好きだよ。



「あんた…馬鹿でアホだから…あたしいっぱい殴っちまった。…ごめんね。」


髪に、手を伸ばす。
触れられないとわかっていても。


「しいな。」
「なのに、直接謝らせてもくれないまんま…逝っちまうなんて…。」


涙が止まらない。
せめて笑って、見送ってやりたいのに。



嘘。

ほんとは見送りなんてしたくない。
傍にいてほしい。



「ゼロス…置いてかないどくれ…。あたし…あたし…あんたがいないと…っ」




伸ばした手が、髪に届く。






─、?






「俺様も、しいなのこと、好きだぜ?」




なんで?
なんで、髪に、さわれるんだ?




「安心しろって。どこにもいきやしねーよ。」






なんで?

背中に回された腕が、あったかい…?




「ゼロス…?」
「しいなの傍にいるぜ?俺様しいなの地縛霊〜。なんちて。」




そのまま。






ゼロスの顔があたしの胸に埋められた。






「うーん…柔けえなぁ…。たまんねーっ」



幸せそうな、笑み。

















「きゃああぁっ!」
「のわっ!ら…乱暴はよくないっしょ!しいな!」



我に返ったあたしは思いっきりあいつの頬を張り倒した。





信じられない。
手が、痛い。


真っ赤に腫れたあんたの頬。



これって、現実?
生きてる…の?




なんで?
どうして?

だって葬儀までして。
あんなに、みんな泣いてたじゃないか。




「…こんだけしいなに想われてるのに、死んでられないっしょ?」


あたしの心境を読み取ったかのように、不敵に笑うゼロス。


「葬式も、発表も、全部偽物。」


じゃあ。
ここにいるゼロスは。



「俺様がそう簡単に死んだりするかよ。」


本物、なんだ。









「…っ馬鹿ぁ…」
「お…おい、しいな。そんなに泣くなよ。」



泣くなだって?
無理なこというんじゃないよ。

あんたが死んだと思って、
どれだけ苦しかったか。
どれだけ悲しかったか。

あんたが生きてるってわかって、
どれだけ嬉しいか。









ん?
ちょっとまって。



…ってことは。

あたしが、
夢だと思って、
さっきゼロスに告げた告白の言葉は。





「!?」
「いやぁ〜、しいなに告白されるなんて、俺様超感激!」



あたし生きてるゼロスにむかって告白しちまったってことじゃないか。



「俺様ちゃ〜んと聞いたからな。」
「〜っ!!」




急激に恥ずかしくなって謝ったばかりなのに何度もゼロスの頭をひっぱたいてしまった。




「痛ぇ!やめろって!」
「馬鹿!アホゼロス!馬鹿馬鹿馬鹿〜っ!」







ほんと、恥ずかしい。


恥ずかしい、けど。







「よかった…。」







やっぱ、こうじゃなきゃ。


あんたが馬鹿したらあたしがいっぱい殴ってやるんだから。




だから。

これからもあたしの隣で幸せそうに笑っておくれ。













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ドラマCDにはやられました。
ゼロっさんカッコいい。まじで。
でもミズホの某女性には…腹立ったなあ…。
ゼロスって気安く呼んでいいのはしいなだけよ!
なーんて…叫びながら聴いてましたけど。

ゼロスが死んだって報道されたなら、しいなの耳に入ってても
おかしくないんじゃないかと思い、勢いでできた作品。
どうしていいか混乱しまくりのしいなが書きたくて
わざとごちゃごちゃにしてみたら…ほんとにごちゃごちゃになった(←馬鹿

◇ 砂 ◇