マタイ受難曲からコラール
ああ、血と傷にまみれし御頭

バチカン 大聖堂 FUJI GS645S 60mm

ヨーロッパの音楽史において、至高にして燦然と輝く作品の一つに、バッハの『マタイ受難曲』があります。この大作の中で繰り広げられる、希望とあきらめ、祈りと嘲り、英断と逡巡との過酷なまでのコントラストを通して、我々は人間の存在を根本から冷徹に見つめることになります。この音楽を「感じる」ためには、もはや宗教心は要りません。生きることについて一度でも真剣に考える経験もった心に、この音楽は強いメッセージを放ち続けるでしょう。そんな名曲だけあって、名演も数多く残されています。古くはメンゲルベルグから、フルトヴェングラー、リヒターの決定版、私の愛聴盤であるクレンペラー。カラヤンも録音していますし、新しいところではアーノンクール、コープマン、レオンハルト、鈴木雅明などなど、枚挙にいとまがありません。しかしながらCDのどの演奏よりも私の心を動かしたのは、20063月に地元静岡AOIホールで聴いた小林道夫氏指揮による演奏会でした。やはり生は迫力が違います。そしてさらに嬉しかったのが、これまた地元の静岡児童合唱団&青葉会スペリオルによる見事な合唱を聴いたからです。あとから分かったのですが、彼女達は定期的にヨーロッパ遠征をする程の実力派集団であり、なんと鈴木雅明氏によるCDでも『マタイ受難曲』の合唱を担当していたのです!静岡にも素晴らしい才能が花開いていることに嬉しくなって、家路に向かったのでした。ところでこの大作にバッハは美しいアリアやコラールを惜しげもなく使っています。その中の一曲コラール「ああ、血と傷にまみれし御頭」を私の編曲でどうぞ。

otsuboent 2009