「皆守ぃ〜、チャンネル変えていいか?」 「ん? ああ、構わないぜ。しかし、お前な」 「何?」 「なんで当然のように俺の部屋でテレビ見てるんだよ」 「いや、何となく。いいじゃないか、カレーのお礼にコーヒー煎れたげただろ」 「訳わかんねえよ」 ぶつくさ言っている皆守を尻目に、葉佩は始まった番組に釘付けである。皆守はそれを横目で見ながら、やっぱり《宝探し屋》なんぞになるだけあって、遺跡やら歴史物の番組が好きなんだなとぼんやり思っていた。自分はそこらにあった雑誌を手に取って、コーヒー片手に読むともなしに目を落としている。 「なあ、この黒柳ってオバサンさ」 「ん?」 「椎名にそっくりだよな」 「ゲホッ、ゲホッ!!」 「どうした? 大丈夫か?」 「お、おまっ……おまえがいきなりおかしな事抜かすからだっ!!」 「ええ〜?」 「『ええ?』じゃねえ!!」 「似てないかな?」 「い、いや、似てるか似てないかと言われれば、確かに似ているような気も……」 「だろ?」 「…………どうでもいいが、葉佩、お前その話を椎名にするんじゃないぞ」 「何で? いくらオバサンとは言え、芸能人に似てるって言われたら嬉しいもんじゃないの?」 「間違いなく喜ばれないから止めとけ」 即答である。 「そういうもん? 女の子って複雑だなぁ。じゃあ男ならいいかな」 「何だと?」 「男なら、有名人と誕生日が同じって、嬉しいかなって。この間発見したんだ〜」 嫌な予感にこめかみが引きつる。葉佩がこういう笑顔で言い出すことに碌なことのあった試しがない。 「……万が一俺に被害が及ぶと困るからな。一応聞いておくか。誰の誕生日が誰と一緒なんだ?」 「生徒会長と〜」 「阿門と?」 「野比のび太〜!」 「ぶっ」 「教えて上げたら喜ぶかな」 「待てっ!! それ以前に比較対象が有名『人』じゃねえだろっ!!」 「日本全国どころか、世界各国でも有名なのに?」 「生きてる人間じゃねえ!!」 「う〜ん。俺なら嬉しいけどなぁ」 「お前だけだっ!!」 この時、皆守は迂闊にも『言うな』と釘を刺すのを忘れていた。そして、葉佩九龍は、禁止されなければ何をやってもいいと思っている男だった。 1週間後、阿門帝等の顔に青筋が増えたのに気付いた皆守は、原因に思い当たり、盛大に頭を抱えた。 |