のれんがパラッと開いたかと思うと女湯から銭湯のおばさん(推定年令七十歳)が素っ裸で現れ、「にいちゃん、雨降ってきたからそのへんの傘どれでもさして帰りや。」と親切な言葉をかけてくれました。「あっ、すんません。あっ、ありがとう。」素っ裸の僕はお礼を言うのが精一杯でした。
あれはいつも遅くまで仕事している僕への神様からの素敵な贈り物だったのでしょうか?今も目をつぶればあの時のシーンが蘇ります。おばさん、ありがとう。あなたもあの傘も最高でした。
というわけ(?)で、今月はトム・ウェイツのデビュー・アルバム「クロージング・タイム」です。いや〜、声が若い。いや、若いというか、今ほどしわがれてないというのか。それでも充分渋い声です。それに渋いのは声だけじゃありません。演奏も渋い。トム・ウェイツのピアノはなんともいえずいい味だしてます。この時23,4歳のはずですが、こんな渋い23,4歳いるんですね。やはり若いうちから夜のお仕事してたからでしょうか?
歌詞をとってみてもとても若者が書いたとは思えないものもあります。40年ぶりに昔の恋人に電話する歌、そんな歌詞、23,4歳で書こうと思います?
僕もできるものなら、あの人に電話してみようかしら。「あの時の傘、返しに行かなくてごめんなさい。だって僕にはあなたが眩しすぎて、もう一度会う勇気がなかったから…。ただ一度だけ裸で見つめあえただけで十分でした。あれからもう20年くらい経ってますが、お元気でしょうか?」 (
2号)