Live In The Heart Of The City Whitesnake
Live In The Heart Of The City
■船木君へ
春たけなわ。中学を卒業し寄せ集めの某府立高校に進学した私は密かに高校デビュー(ギターの)を目論んでいた。期待と不安が交錯する新しい級友との交流。出席番号で私の次にあたる船木君はミエミエの虚勢を張るアバタ顔の男であった。ある授業中ふと覗くと彼はノートに何かを必死に書き連ねている。よく見るとなんとKISSの曲名をファーストから順番に書いているのだった。「次、ゴーインブラインドちゃうん」すかさずつっこんだ私に彼の鋭い眼差しが光った。「なんで知ってんねん」…
こんなこっ恥ずかしい作業を授業中チマチマと行う男。ただ者ではない。聞けばドラムをやっているという。ギターを始めたばかりの私はバンドに誘ったが「俺忙しいからな。他の高校の奴ともやってんねん」さらにこうも言い切った「ビートルズはダサイ!」…ケタ違いや。しかし噂ではバスドラを全然踏まない(踏めない)らしい。

そんなハードロック野郎の彼が大好きなDEEP PURPLEのデビッド・カヴァデイルが結成したWHITESNAKEの初来日が決定した。ソウルフルなデビカバが好きな私は船木君を誘ってチケットを購入。しかし…今では考えられないがこの初公演、チケットが売れず中止になってしまったのだ。その後フロシキ男との評判や家庭の事情もあり、クラスでもどこか浮いた存在の彼とはすれ違いが続き好きな音楽を共有する機会もないまま卒業。その翌年 ”Fool For Your Loving”の大ヒットでビッグネームへと成長したホワスネ2度目の来日公演。
私は再び彼に声をかけチケットを買った…が当日。すでに社会人として高額な布団販売に勤しんでいた彼は何故か来なかった。仕方なしにダフ屋にチケット売って一人で観た。

今振り返ってもこの日のライブはこれまで体験したあらゆる公演中一二を争うベストパフォーマンスだ。バンドの勢い。アンサンブル。曲の楽しさ。その充実ぶりは同時期に発売されたこのアルバムに凝縮されている。全米ブレイク後のメンバーチェンジを繰り返すホワスネにはない、旬のロックンロールバンドとしての蜜月時代のグルーブが体感できる。あんまり好きなんで数年前バンドの友人とポワイトスネイクとしてこのアルバムの再現ライブを行った。そういえば最近また来日しましたね。

二十歳を過ぎ暫く音沙汰がなかった彼から突然結婚式の招待を受けた時はビビった。居酒屋の店長をしてるらしい。出席したところ高校の友人は私を含め3人だけ。明らかに頭数合わせであった…
その後もこちらからの打診は無視するも忘れた頃に3人の親父になった事や独立して店を持った事など唐突にインフォメーションする彼だったが、相変わらずすれ違いが続き未だ20年近く会えず。最近店に足を運んだ時にはすでに他の店舗に替わっていた。
素直ではないがどこか憎めない男、船木。まあいつか一緒にバンドやろうや。バスドラはちゃんと踏んでネ。

                   (フジモト)

リリース 1980 Ready An' Willing
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/ Ready An' Willing
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