Running on Empty Jackson Browne
Running on Empty
■ガス欠で走り続けろ
またまた20年程前のお話。ある飲み屋のおばあちゃんに手相を観て頂いた事がある。
「あんた生活にゃ困らんやろけど、女に苦労するわ」…金言が身にしみる今日この頃である。

Jackson Browne は充実した創作活動の最中に最愛のパートナーを失った。デビュー当時は「宿命の女」ニコとも付き合っていたとか。まさに女難アーティストの筆頭株。どん底の体験から名作「PRETENDER」を発表した。そういえば「タクシードライバー」のトラビス(デ・ニーロ)も "LATE FOR THE SKY" をBGMに人格を破綻させてましたな。

だが私にとってJ.B.(≠ゲロッパ)とはこのアルバムである。
悲惨な状況にもネガティブに走らず自分の弱さとクソ真面目に向き合う男。そんなJ.B.にとってバンドのツアードキュメンタリー的なこの作品は「PRETENDER」後の息抜き的な意味合いもあったのだろう。殆どの曲が他のライターとの共作だが、アーティストとしてよりはライブで歌うプレーヤーとしてのJ.B.の人間味が伺える。まるでロードムービーのような曲の流れはツアー舞台裏の雰囲気を生々しく伝え、人生の苦労も知らず愛がどーとか言われてもピンと来なかった私にもリアルに響いた。
ガス欠車で街から街へ。グルーピーの変なネエちゃん。ドラッグ。ツアーバス中でのリハーサル。そしてコンサートのハイライト…
メンバーもダニー・コーチマー、ラス・カンケル、ローズマリー・バトラー、そしてペダルスチールの盟友デビッド・リンドレーなど最強。

高校の時この面子でのライブを大阪府立体育館で観た。次作にあたる「HOLD OUT」は愛をテーマにしたJ.B.究極のパーソナルアルバムとも言える内容で、アルバムのラスト "HOLD ON HOLD OUT" でもじもじ君パワードと化したJ.B.は新たなパートナーに振り絞るような声で「… I love you!」と告げるのだ。
あざとさの一歩手前。J.B.以外だと底冷えするだけのこのセリフ。日本公演でも彼は本編ラストのこの曲で期待でだらしない笑顔の観客を前に30倍はもじもじしながら、それでも力強くこう言い切った。
「ア…愛ステマス。」
この瞬間私は愛に開眼した(ウソ)。いや、感動しました。アンコール、リンドレーがよたよたとステージ中央に出て歌う”STAY" まさかの "TAKE IT EASY" に理性の箍がふっとんだ。まさに極上のライブでした。

不器用な人間が変にカッコつけたところでたかが知れている。
不器用だからこそ、ガス欠だからこそ私たちは走り続けなければならないのだろう。今でも "RUNNING ON EMPTY" のイントロを聞いたとたんに体中のアドレナリンが沸騰する。

ヤッピーもどきの元先輩へ
「このアルバムこそJ.B.の最高傑作です」  (フジモト)
リリース 1977 Hold Out
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これも聴くべき!!
Jackson Browne / Hold Out
★ ★ ★ ★
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