■ない
いつも何かを探している。無意識のうちにいろんな物をいろんな場所に置いてしまうのだ。たった5分前に使っていたノートが見つからない。電話にでたり玄関にいった拍子になくなる。思いつく限りの所を探すがない。パートナーや同僚が大抵なぜかそこだけ探さなかった場所で発見する。死にたくなる。自分が何の価値もない人間に思える。実際そうである。何もかも捨ててキレイに整理したい衝動に駆られる。
振り返ってみれば仕事や人生においてもそうだった。もともとぼや〜っとした願望しか無く(バンドしたい楽したいセックスしたいなど)リミット過ぎてから結局は苦労して体裁を整えるがそこには欲していた何かがない。結局落ち着かず自分から崩落の道を選んでしまう。
私の好きな作家にリチャードマシスンがいる。アメリカ映画ファンにはおなじみの名前だろう。「トワイライトゾーン」の脚本や数多くのミステリー映画の原作を手掛けている。この人の作品はプロットも凝っているが窮地に追われじたばたする人間の描写がやたらリアルである。最初に読んだのがスピルバーグのデビュー作で有名な『激突!』だが、これに収録されていた『蒸発』が突出してよい(名訳でもある)。中年になり妻や職場とも良い関係を築けない男の話である。自分がわがままな事も解っているが自己制御できない。ある日身近な物や知人が突然蒸発していく。自分が育ったはずの家さえ消えてしまい周囲の者はそこには家などなかったと証言する。男は途方に暮れそれまでの経緯をメモに書き記す…といった内容である。
今まで何度も転職を繰り返してきた。結局は協調性がなくわがままなのだろうが、自分では真に欲するものを探求しているつもりでいる。気がつけば本当に大切なものが周りから無くなっている。
名古屋で半年間、完全歩合制の英会話教材の販売をした事がある。そのとき世話になった道化的でええかげんな先輩とよく車で行動を共にした。なぜか当時YESの新譜「Talk」をよく聴いていた。YESもメンバーの合体/分解を繰り返し訳の分からないバンドになっていたが曲の完成度は高かった。 →次ページにつづく
Yes
Talk
★ ★ ★ ★ ☆
リリース
1994年
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I am waiting