※「あ〜わ 頭文字お題<台詞編>」より。名前変換なし。
「こんにちわ。」
ピットの前、黙って突っ立ってたオレに、静かな声。
殺気立った辺りの声とは、あまりにも掛け離れた落ち着いた口調。
声の主は、どうしたの?と言わんばかりに、首を傾げる。
間違いなく、このピットはあの人のチームのはず。
勝てなかったのは悔しいけど、惹き付けられる走り。
どうしても、話がしたくて。
訪れたピットには、確かにあの人の繰るマシンと…。
勝負の世界には不釣合いな、優しく穏やかな笑顔があった。
「加賀見さんなら、協会の方と打ち合わせ中だよ。
もう少ししたら戻ると思うけど、それまで待っててもらってもいいかな?」
「え…なんで……。」
用件を伝えたわけでもないのに、どうしてオレが来た理由がわかったんだろう。
「鷹島くん…だよね。さっきのレース、見ていたよ。」
それまで柔らかだった視線が、急に鋭さを増した。
「君は…マシンを信用してる?」
「はぁ?」
「もっと、マシンと向き合ってみるといい。」
「なんで、あんたに…!」
悔しかった…そんな事、言われなくたって、自分が一番わかってる。
でも、あの神業的な走りを見せつけたあの人以外に、言われたくなかった。
あの人が言うことなら…認められると思ったんだ。
「カズ…どうしたんだ?」
「あぁ、加賀見さん。お客さんですよ。さっきから、待ちくたびれちゃって。」
クスリと微笑んで、鋭さを見せた視線を和らげる。
まだ、オレの話は…。
「じゃ、僕は調整に戻りますね。
あ、そうそう…さっきの最終コーナー、突っ込みすぎたんじゃないですか?」
「やはり、気付いたか…どうしても、振り切らなければならなかったからな。」
オレと彼を見やりながら、あの人が苦笑いを浮かべる。
あの人に、こんな顔をさせる…彼はいったい、何者なんだ?
「わかりますよ。あなたの命を、預かってるんですからね。」
そう言って、彼はマシンへと意識を向けた。
「どうしたの、疾斗?」
「ちょっとね…思い出してたんだぁ。」
怪訝な顔をして、調整に戻るカズさん。
それが、オレとカズさんとの出会い。
END
WEB拍手公開。<2007.4.18>
サイトUP。<2007.8.1>
WEB拍手から、繰上げ。
勝手にカズさんBD企画(笑)
まだ、チームに加わる前の疾斗と、カズさんとの出会い。
この後、疾斗がちょっとだけでも、マシンを意識してるといい。
カズさんのBD記念に、拍手に置いてました。
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