リスナーさんどうぞ〜!

※「あ〜わ 頭文字お題<台詞編>」より。名前変換なし。


作業を終えて家に帰るため、愛車のキーを回す。
CDを抜いたままのオーディオから、女性パーソナリティーの軽やかな声。

 『それでは、次のリクエスト…リスナーさんどうぞ〜!』

リスナーからの電話によるリクエストという、今では少し珍しくなりつつある企画。
リクエストに関するちょっとしたエピソードに、コメントを交えつつ。
パーソナリティーとリスナーが交わす会話に、耳を傾ける。
何故か、気に掛かってしまった。
リスナーの話に相槌をうつ、パーソナリティーの…声に。
それが彼女の仕事と言ってしまえば、それだけの事だけど。
どことなく、似ていたからかもしれない。
無条件に、自分を暖かく包み込み、全てを受け入れてくれる、声と。
ここ最近は、お互いの仕事の都合で、すれ違ってばかりで。
簡単にメールで済ませてしまっていたから。
何だか無性に、彼女の声が、聞きたくなった。
だが、既に深夜とも言える時間…彼女はもう、休んでいる頃だろう。
起こしてしまうのは、悪い気がする。
でも、彼女に向かってしまった気持ちも抑え切れない。
自分の堪え性のなさに、辟易する。
それだけ、自分の中の彼女の存在が不足している…欲している。

小さな携帯の画面に打ち込んだたった一言を、心もとない波に乗せて。
一瞬だけでも、僕に気付いてくれたらいい。

手にしたままの携帯が、聞きなれた曲と共に震えた。
途切れること無い曲は、着信を示している。
吃驚して取り落としそうになり、慌てて開いた画面に、切望して仕方がなかった名前。

 『カズさん、お疲れ様。仕事は終わったの?』

耳に届いた久しぶりの声は、やっぱり優しい。
疲弊する身体も精神も、緩やかに癒されていく。
声を聞いてしまったら、その姿が見たくなって。
あまりにも君を求めて止まない、欲張りな心。

たった一人の、僕だけというリスナーのために、リクエストを聞いてくれる?

 「これから、会えない…かな?」

くすり、と、照れたように小さな笑声の後、僕だけのパーソナリティーの声が届いた。

 『どうぞ。』


END


WEB拍手公開。<2007.10.15>
サイトUP。<2008.2.2>

WEB拍手から、繰上げ。
相変わらずな、携帯ネタです(^_^;)
どうしても、Backlashには携帯が手放せないらしい。
今時、というかカズさんが、運転中にラジオを聴いているかどうかは不明。
リスナー=ラジオしか浮ばなくて、ラジオを聴くなら運転中…という連想。
好きな声を聴いてると、幸せにならないですか?

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