※「お天気 10のお題」より。名前変換なし。
空は、今にも泣きそうに、どんよりとしていた。
天気予報でも、今日は降るようなこと言ってたし。
走行会はもう終盤で、うまくいけば降りだす前に帰られるかもしれない。
チームのみんなにしてみれば、雨天での路面状況も想定しなければならず、
雨も貴重な練習の機会なんだってわかってるけど。
ずっと遠くで、鈍い音が響いた。
一応、雨天の準備をしていた岩戸さんが、小さく呟いた。
「もう少ししたら、くるかな…。」
私は、なんとなく気付いてはいたけど、恐る恐る聞いてみた。
「来るって…何が、ですか?」
「え?あぁ、夕立が…ね。向こうの空が暗いし、雷も鳴ってたみたいだから…。」
雨天用のタイヤを運びながら答える彼に、私は顔を引き攣らせる。
「やっぱり…。」
「やっぱり?」
怪訝そうに聞き返す岩戸さんに、なんでもないと両手を振って見せたけど。
引き攣った笑顔じゃ、説得力なんてない。
それから少しして、辺りを真っ黒な雲が立ち込めた。
その途端、バチバチと勢いよく雨粒が落ちてくる。
そして……。
一瞬目の前に閃光が走り、少し間を置いて、マシンの轟音と変わらないような音が!!
「きゃぁーーっ!!」
多分、ピット内では、雷よりも私の声の方が驚かせていただろう。
思わず悲鳴を上げてうずくまる私を、鷹島さんと加賀見さんが振り返る。
ちょうど近くにいた岩戸さんも、心配そうに顔を覗きこんだ。
「どうしたの?大丈夫?」
「私…ダメなんです…。」
「え?」
「雷…ダメなんです…。」
側にいた岩戸さんにしか聞き取れないほどの声で、私が言えたのはそれだけ。
外ではまだ雷鳴が轟き、その度に私は身体を強張らせる。
「大丈夫だよ。絶対に、落ちないから。」
「でも……。」
涙目になって見上げると、そこには岩戸さんの笑顔。
「ここは、PCとか精密機械が一杯だからね。避雷設備は、万全だよ。
雷のたびに、一々切ってるわけにはいかないから。
それにね。『雷』って『神』が『鳴る』っていう風にも書くんだ。
昔は『神様』が気まぐれで『鳴らす』って考えられていたんだね。
そう思うと、不思議とそんな気がしてこない?」
まるで子供を諭すように、でも今の私にはとても安心する言葉。
「そう…ですね……。」
走行会も無事に終了し、片付けも済んだ頃。
あれほどの激しい夕立は、すっかりと止んでいて。
重く垂れ込めていた雲が晴れた場所には、空を渡る鮮やかな虹。
END
WEB拍手公開。<2006.8.3>
サイトUP。<2006.11.12>
WEB拍手から、繰上げ。
雷がなっても、走行会は続けるんですかね?
それに、ピット内に避雷設備が整っているのかも不明…(-_-;)
『神鳴り』の語源も、あってるかどうかわかりませんが、
この漢字をあてていたというのは聞いたことがある…。
いい加減で、申し訳ない…(苦笑)
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