※名前変換なし。
■第1章■
私は、自他共に認める「ドンくさい娘」だ。
平らなとこでも平気でコケるという、特技があるくらい。
今日も廊下を歩いてて、人を避けようとして、足がもつれて。
あれ?と思った時にはもう、身体は落下運動を始めていたのだけど。
いつまでも冷たい廊下に落ちる気配は無く、その代わりに背中に暖かい温もりが…。
「大丈夫ですか?」
上の方から、私を心配する人の声。
「ありがとう。でも、あなたは、誰?」
そう言ったら、彼はにこやかに微笑んで。
「俺は、防御回復系のキャラです。パーティーには、必要ですよ。」
って言った。
そうだね、冒険に出るには、防御や回復担当は欠かせないよね。
〜♪
「鳳長太郎が、仲間になった。」
■第2章■
彼は、私に何かあると必ず来てくれる。
今日の体育はバスケで、パスを取り損ねた私は、見事に付き指。
医務室で湿布してもらってたら、戸が開く音がした。
振り返ると、心配そうに立っている鳳くん。
「怪我したって聞いたので…。」
「付き指しただけだよ。湿布したから、平気。」
ホッとしたように笑顔が戻って、一緒に医務室を出る。
「ちょっと、来てもらっていいですか?」
連れてきてくれた屋上は、風が気持ちよくて、大きく深呼吸する。
すると、鳳くんは湿布を巻いた私の手を両手で包んで、口元に寄せふっと息をかけた。
ジンジンと痺れていた指先が、急に暖かく感じて痛みを忘れた。
「回復は、俺の仕事です。」
〜♪
「鳳長太郎は、回復の呪文を覚えた。」
■第3章■
昼休み、私はちょっとキツそうな女生徒に呼び出されてしまった。
人気の無い裏庭に連れられていくと、そこには他にも数名の女の子達。
「あなた、最近、鳳くんにつきまとってるらしいじゃない。」
「ちょっと、馴れ馴れしいんだけど。」
いきなり、モンスターに遭遇しちゃった気分で、あまりの剣幕に足が竦む。
「そんな所で、何してるんですか?」
そう言って、鳳くんが私の前に立ったから、私には表情を見ることが出来ない。
「鳳くん!どうしてここに?」
「だって、鳳くんがその女に付きまとわれてるから、私達…!」
そんな彼女達に、鳳くんは前髪をかきあげて、フッと笑ったようだった。
途端に、あれほど高かった彼女達のテンションは落ち、その場にへたり込んだ。
「跡部さんのスキルをちょっと借りました。さ、行きましょうか。」
〜♪
「鳳長太郎は、天使の眼差しを覚えた。」
■第4章■
学校帰り、鳳くんと一緒に歩いてたら、マンホールにつまづいた。
「なんで、こんなにマンホールが多いんだろ。」
呟いた私に、鳳くんは言った。
「これは、地下洞窟への入り口です。出口がどこに繋がってるかは謎ですけど。」
「じゃあ、迷っちゃうね。」
「だから、一番最初に見つけた宝箱は、絶対に開けなきゃダメですよ。
地下洞窟の地図があるはずですから。」
鳳くんが、洞窟攻略のコツを教えてくれた。
「もし、地図の宝箱を見つけられなかったら、どうするの?」
「地図無しでも行けますけど、かなり時間をロスしますし、戦闘も多くなります。」
「戦闘は、嫌だなぁ…。私はそんなに、強くないよ。」
「大丈夫ですよ。その時は、俺がマッピングしますし、あなたを守りますから。」
〜♪
「鳳長太郎は、地下洞窟の地図を手に入れた。」
■最終章■
鳳くんは、いつも私の側にいる。
コケそうになると助けてくれるし、怪我をすると手当てしてくれる。
落ち込んでると慰めてくれて、愉しい時は一緒に笑ってくれる。
最初はあまり深く考えてなかったけど、最近考えてしまう。
彼は、どうして、私の側に、いるんだろう?
「防御の担当がいるでしょ?」「回復は俺の仕事です。」
「行きましょう。」「あなたを守りますから。」
彼と最初に出会った時の会話に、ゲーム感覚でのってしまったけど。
ただ、RPGで一緒に冒険してる感覚で、彼は仲間だと思ってたけど。
私は急に、現実に戻った…いつまでも付きあわせちゃだめだね。
「鳳くん、そろそろゲームオーバーだよ。」
「俺が、あなたの仲間になった意味、わからないですか?」
鳳くんが、真っ直ぐに私を見つめた。
私は、その視線に、身体が麻痺していく。
「俺が、あなたを救う、勇者だからですよ。姫…。」
私は彼の言葉で、HP/MP全てにダメージを受けたみたい。
〜♪
「鳳長太郎は、魅惑のまなざしを覚えた。」
鳳くんは、見事にこのゲームを、クリアできたようです。
END
WEB拍手公開。<2006.5.27>
サイトUP。<2006.8.3>
WEB拍手から、繰上げ。
某RPG風…を、目指してみましたが…。
よく考えると、ゲームを知らなきゃ、訳がわからないと気付いた。
(気付くの、遅すぎ(-_-;))
まぁ、勇者「ちょた」を想像してもらえたら…。
本人だけ、愉しんでた作品だったり(苦笑)
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