所詮は予報

※「お天気 10のお題」より。名前変換なし。


窓の外は、雨だった。

 「あーぁ…なんで、雨降ってくるんだろう。」

私は、椅子に横座りして、後ろの席の彼に話しかける。
教科書を眺めている彼は、相手にもしてくれない。

 「今日の天気予報は、雨じゃなかったのに…。」

彼を横目で見ながら、私は話を続ける。
教科書から視線を外さず、彼は黙ったまま。

 「降水確率だって、20%だったんだよ。」

彼の机に頬杖を付いて、盛大にため息を零す。
静かに教科書を閉じて、彼が顔を上げた。


 「ねぇ、いったい、俺に何を言わせたいわけ?雨が降ったのは、俺のせいだとでも言えばいいの?
  そうだよな。雨が降るのも、天気予報が外れるのも、降水確率が当てにならないのも、全部、俺が悪いんだ。
  これで、君は満足した?で、不本意なこの俺の気持ちは、どうしたらいい?
  まぁ、君はそんな事なんて、考えてないんだろうけど。
  なんか、ムカツク…君が後ろを向いて話すたびに、相手してるこっちの身にも、なって欲しいよな。」
 「……よかった。」
 「何が?まったく、君って、わかんないよね。もしかして、俺が言った事、スルーされてる?
  そうなんだ。俺の言うことなんて、その程度なんだ。だったら、わざわざ話し掛けないで欲しいんだけど。
  それとも、地味に、からかわれてるとか。いい加減にしてほしいよな。
  俺の事からかって、そんなにおもしろい?人の気も、知らないで…。」

私は、彼のぼやきを聞いてるのが好き。
だって、この時は、まっすぐに私を見てくれるから。
なるべく長く、彼がぼやいてくれたらいいと思う。
さしずめ、今日の確立は…。

 「今日の伊武くんのぼやく確立も、20%だったけど。いい方にハズレたみたいだから…よかった。」
 「何、それ?どうでもいいけど、所詮は予報でしょ?その確立だって、きっと君次第だと思うよ。」


窓の外は、もう青空。


END


WEB拍手公開。<2006.8.3>
サイトUP。<2006.11.12>

WEB拍手から、繰上げ。
やっぱり、伊武の話し方がつかめてないようです(-_-;)
「どうでもいいけど、所詮は予報でしょ?」の台詞を、
伊武に言わせたいがためにできたお話。
ぼやく確立って、なんなんでしょうねぇ(苦笑)

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