台風の目

※「お天気 10のお題」より。名前変換なし。


彼は、いつも注目の的。
彼の周辺には、女の子の噂がいっぱい。


彼は涼しい顔して、女の子の隣で笑っている。
彼の周辺は、激しい渦が、逆巻いているのに。


彼は、まるで、台風の目のよう。


私は、巻き込まれたくない。だから、彼に近寄らない。
彼とは一生、関わり合いにはならない…はずだったのに。


 「ねぇ、君。」
 「…え?」
 「うん、やっぱり。ここで、君と会えるなんて。
  ホントにオレって、ラッキーだなぁ。」

ほら、ここを中心に、ざわざわと渦を巻き始めた。
ここは、台風の目の中。

 「ねぇねぇ、これからデートしない?もっと、話をしようよ。」

だんだんと、勢力をあげていく台風が、周りを取り囲む。
なのに、ここだけは、音もなく静かで、風も凪いでいる。

 「どうかな?」

これから容赦なく襲ってくる、風雨なんて嘘のよう。
首を傾げてにっこりと笑う彼は、束の間の太陽みたい。

 「千石!また、部活サボる気だろ!いい加減、真面目に――!!」
 「ヤバッ!邪魔が入っちゃった!う〜ん…残念だけど、またね。」

無造作にかきあげられた髪が、サラリとオレンジ色に煌いた。
そして、南くんに追い立てられるように、慌しく去っていく。


私の心には、通りすがりの台風が残した、小さな傷跡。


END


WEB拍手公開。<2006.8.3>
サイトUP。<2006.11.12>

WEB拍手から、繰上げ。
初キヨ!…でも、あんまりキヨがでてません(苦笑)
台風の目のように、キヨがいるところは穏やかだけど、
その周辺は大騒ぎになってるといい。
キヨは、台風の合間のちょっとした晴れの日のよう。

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