※「お天気 10のお題」より。
こんな日は、本当に憂鬱。
降るのか止むのかはっきりしない、サラサラとした、雫。
手に持った傘の扱いに困り、私は玄関先で立ち竦む。
「さん?このような所で、どうされました?」
傘がないわけでは無いようですね、と、私の手元を見て笑う。
そんな彼の手元には、傘らしいものはない。
「なにか、いいモノですね。そぼ降る雨、というのも…。」
風情があります、と、空を見上げて学生らしからぬ台詞を吐く。
彼の感性は、私とは違う方を向いているらしい。
「柳生君は、帰らなくていいの?」
「私が、ここにあなたを残して、先に帰られると思いますか?」
あなたが帰るのを見届けましょう、と、当然とばかりの彼の言葉。
それならば、と、私は傘を差し出した。
「だったら、最後まで見届けてください。」
「喜んで、エスコートさせていただきます。」
彼は傘を受け取ると、私が濡れないように歩調を合わせた。
私は、憂鬱な雨が、嫌いではなくなった。
END
WEB拍手公開。<2006.11.12>
サイトUP。<2007.2.20>
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最近、ちょっとお気に入りの紳士。
申し訳程度に、名前変換を入れてみましたが…。
これは、あってもなくても、いいのかもしれない。
少し、策士な紳士でした。
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