そんなのってないよ!!

※「あ〜わ 頭文字お題<台詞編>」より。名前変換なし。


視界に映るコート上では、後輩と敵校の選手が試合を行っている。
僅かながら、敵の方へと流れが行きかけているようだ。
コートで膝をつきかけた後輩の姿にも、チームメイト達は顔色一つ変えず。
その非情さが、常勝と言われる我が校の風格を表している。
負けは、許されないのだ。

調子付く敵選手は、母国語でなにやら挑発しているが、外国語の苦手な後輩にわかるはずもなく。
挑発されている事だけは彼も感じているので、歯痒さに眉を顰めている。
もうそろそろ、彼が真の姿に覚醒する刻も近い。
その銃爪を引く役目は、計らずも私に委ねられてしまいました。

 「なぁ、なんて言ってるんだ。アイツ。」

敵が、何と言っていたのか。
もちろん、私にはわかっています。
聞くに耐えられない、あからさまな侮辱です。
彼でなくとも、怒り心頭に発する、です。
ですが、それ以前に、既に私も業を煮やしていたのです。

勝利のための策だとしても、あのような無様な試合をしてしまった、自分自身に。

例え彼の覚醒の、ひいては後進のためとは言えど……いえ、これ以上は、今さら言っても仕方のない事。
ただ、その鬱憤の捌け口を求めることくらいは、許されるのでは?
それは、私に委ねられた役目を果たすためにも、非情に効果的なのですから。

 「――ワカメ野郎。」

コートの中で、彼の纏う空気が色を変えました。
憤然と立ち上る、真っ赤な炎。
彼の目も、真っ赤に充血しています。
これで、私の役目は、全て終了しました。
後は、任せていいでしょう。
私だって、墳悶極まりないのですから、それくらいはしていただかないと。

あぁ、こんな事を彼に知られたら、きっとこう言って拗ねてしまうのでしょうね。


 「そんなのってないよ!!」


END


WEB拍手公開。<2007.5.17>
サイトUP。<2007.9.13>

WEB拍手から、繰上げ。
言わずと知れた、悪魔降臨の儀、です。
勝負に対しては負けず嫌いな紳士なので、
可愛い後輩のためとは言え、本当はハラワタ
煮えくり返ってるんじゃないかと思いますが、
紳士なので表には出しません(^_^;)
やぎゅって、おいしいトコ取りなんだから。

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