渇望


 「柳生…もう、カラカラじゃ…。」

オレは机にうつぶせたまま、手元で捲られるページから視線を外さない柳生を見上げた。

 「喉が渇いたのでしたら、ラウンジでどうぞ。
  こちらでの飲食は、禁止されていますから。」

なんとも、つれない台詞…相変わらず、視線は手元に向けられたまま。

 「乾きすぎて、干乾びそうじゃ…。」

切れ長の瞳を静かに閉ざし、薄く開いた唇から軽く吐息が零れる。

 「ですから、何か飲んでいらしたら……!」

途端に言葉を詰まらせたのは、額が触れそうなほど詰め寄ったオレの所為。

 「だから柳生……潤して……。」
 「……!に、におう…く、ん……。」

言葉を紡ぐ度に、触れるか触れないかの、唇の距離。

 「溺れるほど、お前を浴びていたい。」

お前が足りなくて、もうカラカラなんだ。


END

WEB拍手公開。<2008.2.2>
サイトUP。<2008.5.10>

WEB拍手から、繰上げ。
本を読み始めると、他の事を忘れてしまう柳生と、
忘れられてしまう仁王。
身体中で浴びるほど、水分のように補給したい、と…(^_^;)

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