オレがお前で、キミが僕


 「時々…考えてしまうんです。」

案の定、こちらに向けられたのは、疑問符付きの視線。
何も言わない彼に構わず、言葉を繋ぐ。

 「今の僕は、本当に僕なんだろうか…と……。」

視界の端に、少し細められた彼の瞳が映る。

 「今の僕は、もしかしたら本当の僕ではないのかもしれない。」

やはり、彼は何も言わず、ただ鋭い視線で、僕を透過するように見つめる。

 「もしかしたら、僕はボクではなく、きみが演じているボク、で……。
  君は……キミではなく、僕が演じている、キミ…なのでは、と……。」

ずっと黙って聞いていた彼が、可笑しそうに口元を綻ばす。

 「…やはり、変…ですよね。」

馬鹿げている、こんな、発想…自分でもおかしく思い、自嘲する。
でも…。

 「それでも、ええよ。」
 「…え?」
 「どんなお前でも、それがお前であるなら、オレはええよ。」

入れ替わって、混ざり合って、境界も何もかも無くなって、区別も付かなくなって。
それだけ同じになれるなら、オレがおれじゃなくなってもいい。

 「それでは、僕もぼくではなくなってしまいますね。」

キミと同じになれるのなら、それもいいのかもしれません。


END

WEB拍手公開。<2008.2.2>
サイトUP。<2008.10.28>

WEB拍手から、繰上げ。
タイトルそのまま。
でも、書いているうちに、自分でも訳がわからなくなった(苦笑)
演じている君だろうと、本当のキミだろうと、
それがきみであるなら、いいんだよ。

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