心の所在
「仁王くん…仁王くん……!」
心地いい声に、うっかり聞き惚れる。
「仁王くん…聞いてるんですか?」
「おぅ、聞いちょるよ。」
「だったら、返事くらいしたらどうですか。」
咎める声だって、聞き逃すわけ無い。
「まったく…心、ここにあらず…じゃないですか。」
「そのとおりじゃ。」
怪訝そうに首を傾げる仕草が、案外子供っぽい。
「オレの心は、ココには無いぜよ。」
オレは、自分の胸元にそっと手を当てる。
「それは、心の所在は心臓か脳か…という説の…?」
「そんな小難しい議論を、お前さんとやりあう気はなか。」
相変わらずの鈍感振りに思わず苦笑を零し、その胸元へ手を伸ばす。
「オレの『心』は、ココに……。」
触れた手のひらに伝わる、速くなる鼓動。
大きく見開かれた、レンズの奥の瞳。
「…勝手に預けられても、責任は持てませんよ。」
明らかに照れ隠しとわかる、大きな溜め息を一つ。
そして、大事そうにそっと、オレの『心』を包み込んだ。
END
WEB拍手公開。<2008.2.2>
サイトUP。<2008.10.28>
WEB拍手から、繰上げ。
もともとは、『心此処に在らず』の台詞から出来た話。
此処になければ、どこにあるのか…となれば、
仁王の心の在処なんて、やぎゅのとこしか無いんじゃないかと(^_^;)
よくやる、甘いの目指して、玉砕というパターン…(苦笑)
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