ルーレットを回して
※「あ〜わ 頭文字お題<台詞編>」より。

 「なぁ、柳生。」
 「なんですか?」
 「ルーレットを回して?」
 「は?」
 「お前さんが、ルーレットを回してくれ。」

仁王の突拍子もない発言は、いつものこと。
その度に、柳生が思案させられるのも、いつものこと。

 「お前さんがディーラー、オレがプレイヤ。
  1対1で、サシの勝負。1枚賭け、配当36倍。」
 「はぁ…。」
 「どうじゃ、この勝負…ノルか?」

何か作為のありそうな笑みを浮かべ、仁王は瞳を細めた。
柳生の、見掛けによらない負けず嫌いが、首をもたげる。

 「私が勝った場合の、その配当に対する、報酬は?」
 「おっ、乗り気じゃな。」
 「報酬によります。」
 「そんなのは、決まっとろうが。」

仁王は、柳生の肩に手を掛け、引き寄せた。
僅かに抵抗する柳生の耳元で、そっと囁く。

 「36倍の、長い夜を…。」
 「………。」

少しの間、柳生は黙考した後、徐に大きく息を吐き出して。

 「私に、メリットがある様には思えませんが…。
  第一…そんなの、いつもと同じじゃないですか。」

非難めいた台詞も、微かに染まる頬では、説得力が薄れる。

 「オレが勝ったら、36倍、お前さんが欲しい。」

勝手にしてください!と言い残し、柳生は足早に踵を返す。
素直じゃないのぅ…、と失笑し、仁王はその後を追った。


END

WEB拍手公開。<2007.10.15>
サイトUP。<2008.2.2>

WEB拍手から、繰上げ。
ギャンブルなら、彼等。
いつも、お互いに駆け引きしてたらいい。
結果的には、同じ事になるんだけど。(^_^;)

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