月って、あんなに紅かったか…。
今にも無くなりそうなほど、細く欠けた月を俺は見上げていた。
あんなに高く、刺さるほど細い月を見るのは初めてかもな。
それに、あの色…血の様に紅い。
月って普通、乳白色とか、ぼんやりしたオレンジとか…。
それも、地面すれすれの大きくて妖しく浮かぶ満月の時ぐらいしか色なんて。
なのに今、俺が見上げているあの月は、あんなに…紅い。
それは、血を滴らせてにやりと笑う口元を連想させた。
どうして俺は、月を見上げているんだろう。
あれほど高く浮かぶ月を見上げるとなると、寝転ぶぐらいしかとる体勢はないだろう。
すると、俺は今、寝転んでるのか?
どこで?
記憶が…途切れている。
何をしていたのかも、覚えていない。
とにかく起きようとしたが、体が言う事を聞かない。
どうにか動かせた右手をかざしてみる。
あの細い月の明かりにぼんやり浮かび上がる俺の右手。
月と同じように…紅い。
あれ?…あぁ、そうか…。
月が紅いんじゃないんだ……紅いのは、俺の視界…。
全ての物が、血に染まり…紅く…紅く。
変わらないのは、漆黒の闇だけ。
薄れていく意識の中で、空に浮かぶ妖の口が、新たな血を求めて不気味に笑った。
END
2004.5.6
短いです。
視界が赤く見えるほどの流血シーン…ですか?
なんか、報われないまま終わってしまいました。
彼は、はたして助かるのでしょうか?
いや、自分で言うのもなんですが…(-_-;)
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