01.冷たい真実02.たったひとつ03.行方04.向こう側06.変わらないモノ09.まなざし10.……ない
11.ベンキョウ12.知らないひと14.理由15.聴こえる16.望むモノ17.遠い街18.旅立ち19.今20.優しい嘘


  ■01.冷たい真実 「星のまほろば」(空見)
本当は、知ってたよ。
ボクには、どうしようもないことぐらい。

そりゃね、ボクはまだ子供だし。
小さくて、力も無いし。

ねぇ、そんなボクではいけないの?
あなたの隣に、いちゃいけないの?

きっとあなたは、そんな事は無い、って言うだろうね。
優しいあなたは、お前が大事、って言ってくれるよね。

でもね、あなたの隣は、あの人じゃなければダメなんだ。
それが、ボクに突きつけられた、冷たい真実。

WEB拍手公開。<2006/11/2> サイトUP。<2007/2/11>

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  ■02.たったひとつ 「頭文字D」(慎吾)
たったひとつ…それだけでいいんだ。

オレ達には、共通するモノなんて何もない。
学生のオレと社会人のお前では、生活サイクルも違う。
付き合う奴等や、取り巻く環境だって、お互い別々だ。

確かなことなんて、何もない。
別に、そんなモノなくたっていい。

身体を駆け巡る緊張、ぞくぞくするほどの興奮。
この感覚を、肌に感じていられるなら。
お前と、この感覚を、共鳴していられるなら。

オレには、それだけあればいい。

WEB拍手公開。<2007/2/11> サイトUP。<2007/6/8>

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  ■03.行方 「星のまほろば」(水支)
あなたが、どれほど大事に思っているのか。
オレにだって、わかってますよ。

それはもう、かけがえのないものだって。
あなたが守りたいと願う、小さな宝物だって。

彼の想いだって、わかってる。
オレの想いと、同じくらい深い気持ち。

それでもオレは、あなたの隣にいたいと思う。
彼の気持ちを知っていながら、オレはこの場所を譲れない。

彼の気持ちの行く先は、あなたへ…あなたはそれを、受け止める。
オレの気持ちの行く先も、あなた…その想いの、行方はどこへ。

WEB拍手公開。<2006/11/2> サイトUP。<2007/2/11>

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  ■04.向こう側 「星のまほろば」(水支)
水曜日の午後。
休講で時間を持て余したオレは、当てもなく賑やかな街を歩いていた。

大きなガラス窓に、一瞬、陽光が反射して、思わず足を止める。
そして…その向こうにいたのは、スーツを着こなした、キャリアって感じの女性と…。

あの人、だった…。


テーブルの上には、コーヒーのカップと、手前に並べられたお互いの名刺。
おそらくは、クライアントとの打ち合わせなのだろう。
穏やかな笑顔を浮かべているところを見ると、どうやらうまい具合に話は進んでいるようだ。


あの笑顔は、あくまでも営業用だと思うけど。
そうであって欲しいと…感情的なものではないと、思い込みたいけど。
こんな薄いガラス一枚隔てた向こう側なのに、どこか、別の世界のような気がする。

こっちに…オレに、気付かないかな?
…なんて思いながら、オレはその場から、動けない。

WEB拍手公開。<2007.6.8> サイトUP。<2009/7/24>

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  ■06.変わらないモノ 「転生学園幻蒼録」(飛鳥)
桜が舞う中、厳かに立つ。
なんの躊躇も無く、手を差し出す。

情け容赦なく、剣を振るう。
余裕の笑みで、小さなボールを追う。

厳しい眼差しで、戦況を読む。
仲間達とふざけて、無邪気に笑う。

凛とした鋭さと、懐深い穏やかさと。
対照的な印象も、どちらもあの人を表すモノ。

いつまでも、変わらないモノ。
これ以上、変わることはない、あの人の面影。

WEB拍手公開。<2006/11/2> サイトUP。<2007/2/11>

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  ■09.まなざし 「頭文字D」(慎吾)
お前、自分でわかってないだろ。
オレを見る時のお前の視線…たまんねぇんだ。

射竦められるみてえな、鋭いまなざしに。
眩しそうに細める、柔らかいまなざしに。
辛そうに歪める、憂いを帯びたまなざしに。
きっちり閉じられた、その瞼ですら…。

オレの気持ちを、グラつかせるんだって。

お前のまなざしが、オレを狂わせるんだって。

WEB拍手公開。<2006/8/10> サイトUP。<2006/11/2>

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  ■10.……ない 「頭文字D」(中里)
何か大切なものが、足りないような気がした。

思い当たるものを、一つ一つあげてみる。
あれでは、ない…これでも、ない……違う…ちがう…。

どうしてだろう…これほど物足りないと感じているのに。
それが何か、思い出せないなんて。

やけに広く感じる部屋に、一箇所だけポッカリと空いた空間。
とても大切なものが、今は……ない。

あぁ、確かにそこに、あったはずなのに…。

「なにやってんの?お前…。」

……ない、と思っていたものが、こんなところで怪訝な顔。

WEB拍手公開。<2007.5.25> サイトUP。<2009/7/24>

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  ■11.ベンキョウ 「ときメモGS」(桜弥)
夏休みの課題を一緒にしようと、誘ったのは、あなた。
今、僕の前で、机に突っ伏して寝息をたてている、あなた。
まったく、あなたって人は…。

呆れて零すため息も、すぐに緩んだ笑みに変わって。
あなたの寝顔を眺めているのは、僕。
まったく、僕という男は…。

勉強なんて、僕にとっては都合のいい口実。
結局は、あなたと一緒に、というのが重要。
本当に、僕は…。

僕は、もっと勉強しなきゃダメみたい。
あなたのことを、もっとよく知るために。
一番難しい「ベンキョウ」だけど。

WEB拍手公開。<2006/8/10> サイトUP。<2006/11/2>

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  ■12.知らないひと 「星のまほろば」(知風)
知らないよ、あんな人。

細いフレームの眼鏡を、中指で押し上げる癖。
ほら、ちょっと困った顔してる。
そんなあの人の癖に、隣の彼は気付いてるよね。

でもね、僕にだって、すぐにわかったよ。
だって、出会った時から、ずっと見てたもの。

それを指摘した時の、慌てるあの人がとても愛おしい。

だからあれは、僕の知らないひとだ。
あんな感情が溢れそうな視線を注ぐ、あの人なんて。

あんな表情で笑うあの人なんて、僕は、知らない。

WEB拍手公開。<2007/2/11> サイトUP。<2007/6/8>

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  ■14.理由 「ときメモGS」(和馬)
今、手の中にある、小さな包み。
それを見つめて、その意味を考える。

だって、これの意味がわかるか?
今日、これを渡された意味が。

いつも、バカ言って、笑ってたのに。
いつも、ふざけて、おどけてたのに。

これは、そこらの売り物と違う。
俺にだって、それくらいわかる。

今日、お前がこれを渡した、理由。
俺もちゃんと、その理由を考えるよ。

WEB拍手公開。<2007/2/11> サイトUP。<2007/5/25>

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  ■15.聴こえる 「頭文字D」(中里)
ざわめきの中、聴こえてくるのは、お前の声。
これだけ辺りに、様々な声が溢れているのに。

一方的に送られてくる、電波のように届く。
俺の耳に響くのは、聴き慣れてしまった声。

意識的に集中して、その声を拾い集めてみる。
他愛も無い仲間達との会話、時折零す笑い声。

視界には入らない、背中合わせの、お前の声。
その姿は、見えなくても…聴こえてくる、声。

「声だけで、いいのかよ。」と、聴こえた気がした。
「そんな訳、無いだろう。」と、苦笑うしかない俺。

WEB拍手公開。<2006/11/2> サイトUP。<2007/2/11>

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  ■16.望むモノ 「星のまほろば」(水支)
オレが望んでいるもの?

そーだなぁ…たとえば、かわいい女の子とか。
ちょーっと、単位をおまけしてもらえるとか。
夢に浸ったまま、眠り続けることとか…。
…そんな顔しないでくださいよ、冗談なんですから。

でも、浸り続けていたい、夢がある。
自分が、どんどん深い水底に沈んで、そのまま…。
その深い水底で、大地に受け止められて。
…だからきっと、大丈夫。

オレが望むモノ…。
それは、沈んでいくオレを、受け止めてくれるあなた。

WEB拍手公開。<2006/8/10> サイトUP。<2006/11/2>

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  ■17.遠い街 「頭文字D」(慎吾)
オレは、一度も来た事の無い景色の中、愛車を走らせていた。
どうしてこんな所を走っているのか、自分でもよくわからない。
ただ、ここはやたらと面白いコースで。
オレは、このコースの攻略に、躍起になっていた。

いつの間にか、隣には見知った男が乗り込んでいた。

「いつまで、こんな所で走っているつもりだ…。」

毎度毎度、口煩い男だ。
それでもオレは、コイツとツルムのは嫌いじゃないと思っている。

「お前は、こんな所にいてはイケない…。」

コイツに何がわかるというんだ。
オレがどこを攻めようと、コイツには関係ねえだろう。
今は、このコースを攻略したいんだ。
それでなければ、わざわざこんな遠い街まで、のこのこ出向く訳が無い。

「早く、帰るんだ…。」

黙れ!ウルサイ!
オレは、走らなきゃならねえんだ!
この遠い町の、その更に遠い場所まで。

……どうして?どうして、そう思う?
突如、襲われた疑問。
その途端、目の前にはどこまでも真っ暗な闇が、パックリと口を開く。
いきなり運転席から投げ出され、まっすぐその深淵の闇の中へと堕ちていく。

「行くんじゃない!戻るんだ!帰って来い!」

どこまでも、どこまでも、堕ちていく身体…イヤダ逝きたくない…

「逝くな!いや…俺が、逝かせない!慎吾!!

その声に向けて、オレはあらん限り手を伸ばす。
行きたくない、逝きたくない…オレは、お前と………!

フワリと引き上げられる感覚…力強く握られた腕に、火傷しそうなほどの、熱。



「気が付いたか、慎吾?」

薄く開いた視界に、今にも泣き出しそうなアイツの顔。
安堵の表情を浮かべ、壊れ物を扱う様にそっと抱きしめる腕に感じた、熱。
あの時、堕ちるオレを引き上げたのは、やっぱりコイツ。
身動きの取れない身体、腕へと伸びるチューブ、オレは一体……。

「…事故に、巻き込まれたんだ……一週間、意識が戻らなかった……。」

「よかった…。」と呟くアイツの声が、オレの耳を震わせる。

オレはもう二度と、あの遠い街へ行きたいとは思わない。

WEB拍手公開。<2007.10.20> サイトUP。<2009/7/24>

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  ■18.旅立ち 「オリジナル」
それは、仕事帰りのバスの中でした。
私は少し、疲れていたのかもしれません。
身体の疲労か、精神の疲労か、どちらともしれないくらい疲れていたのだと思います。
そんな疲れた身体には、バスの連続的な振動が、あまりにも心地よくて。
ずっと昔、物心付く前の潜在的な記憶を呼び起こされたように、私はこの動くゆりかごに身を任せました。

最近、部署が変わった所為か、仕事で小さなミスが続きました。
周りの同僚がフォローに右往左往するのを、私は小さくなって見ているしかなく。
まだ大目に見てくれるからいいものの、やはり先行きは不安になります。
このまま、ここにいていいんだろうか?ここは、私の居場所なんだろうか?
一人になると、いつも考えてしまいます。
もっと前向きな考え方をする方が、よっぽど建設的だとは、自分でもわかっているのに。
知らず、深いため息が零れました。

だからかもしれません。
停留所名を告げる運転手の低い声が、私を微睡の中から引き上げました。
そこは、見た事も聞いた事もない、場所でした。
古臭いバス停と、ささくれだった木製のベンチに、随分辺鄙な処へ来てしまったと、唖然としました。
辺りは、薄い靄に覆われて、一見不気味な雰囲気がします。
なのに私は、バスから一歩、踏み出しました。
どうして、そんな無謀な事をしてしまったのか?

それは多分、新たな人生への旅立ちだったから、かもしれません。



「彼女は、まだ消息がつかめないのか?」
「はい、先週の金曜日の退社後から、誰も彼女の姿を見ていないようです。」

WEB拍手公開。<2007.6.8> サイトUP。<2009/7/24>

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  ■19.今 「頭文字D」(慎吾)
 「今、何か言ったか?」
 「はぁ?どうしたよ?」

急にこっちを向いて、いきなり何を言うかと思えば…。

 「いや…呼ばれたような気がしたから。」
 「…呼んでねぇよ…ボケたか?」

眉間にシワを寄せ、憮然とした顔でオレを睨みつける。

 「なら、いい。…ったく、誰がボケるか!」
 「呼ばれた気がするなんて、兆候ありじゃねぇかよ。」

アイツは、構ってられないと溜め息をついて、また雑誌へと意識を向けた。

 「誰が、呼ぶかよ…てめえなんて……。」

アイツに聞こえないほど、微かに呟く。

中里…中里…
今、心の中で呼んでいた声が、聞こえてしまったかと思った。

WEB拍手公開。<2007/4/19> サイトUP。<2007/10/20>

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  ■20.優しい嘘  「転生学園幻蒼録」(京羅樹)
なぁ、今、すごい情けない顔してない?
ちょっと、待ってよ…なんで、そんな顔しちゃうわけ?

別に、あんたが困るって訳じゃないっしょ?
オレっちは、あんま気にしてないしさぁ。

なんか、同情されてるみたいで、嫌なんだよね。
そんな顔で、見られると。

別に、どぉってことないんじゃないの?
まだ、普通に、生きてイケるんだし。

まだ、見えてるんだから、あんたも気にしないでよ。
もう、あんたの涙は、見えないけどね。

WEB拍手公開。<2006/11/2> サイトUP。<2007/2/11>

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END


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