Day After Day 〜 中里SIDE



あのEG−6とのバトルから数日後、たて込んでいた仕事が一段落したこともあり、久し振りに峠に顔を出すことができた。
車から降りるや否や、いつもいろいろサポートしてくれている高田が駆け寄ってきた。

「中里さん、昨夜あいつが来ましたよ。」

実は、高田にだけはあいつをチームに誘った事を話してある。
しばらく峠に来れない状況だったこともあって、あいつが来た時の対応を頼んでおいたのだが。

「あいつ、何か言ってたか?」

誘った当の本人が不在というのは失礼だな、とは思ったものの、なかなか仕事の都合がつかないこともあり、それに、 こんなにすぐ来るような素直な男にも思えなかったし。
そう思ってつい、高田に任せてしまったのだが。
そうか、昨夜来たのか。それほどひねくれた奴でもないんだな。

「いえ、別に。中里さんいないの確認して、そのまま出て行きましたけど…。それより、みんなビックリしてましたよ。
 あいつ、チームに誘った事。まぁ、その辺はうまく言っておきましたけど。」

やっぱり頼りになる奴だな。期待したとおりのことをしてくれる。心の中で思い切り感謝!

「それと、あいつの名前わかりました。―庄司慎吾、○○大学の1年です。」

どうやって調べたんだ?つくづくこいつの情報網には頭が下がる。高田って、調査員向きだな。
そんな俺の心のうちを見透かしたように、高田の報告は続いた。

「ギャラリーの中に、庄司のこと知ってる奴がいたんです。
 高校生の時に一度妙義にギャラリーしに来たらしいんですけど、それからは一度も来た事ないそうですよ。
 免許取って車買ってからは、ずっと碓氷で走ってたみたいです。上達は、かなりのものみたいですね。
 でも、あんな無茶な走りはしてなかったって…。」

高田の報告を聞きながら、ポケットから取り出したタバコに火をつけた。
ゆっくりと煙が立ち昇る。
どうして急に『デンジャラス』なんて呼ばれるような走りをするようになったんだろう。
ゆらゆらと揺らぐ煙を眺めて、ぼんやりとそんなことを考えていた。
―しばしの沈黙…。
その沈黙にはじめて、何かを言いあぐねている高田に気付いた。

「どうした?」

俺の質問に何か迷っていたようだが、高田は静かに口を開いた。

「あんな走り方するようになったの、中里さんがRに乗り換えた頃かららしいですよ。」

「……!」

俺が、Rに、乗り換えた頃?
それが庄司の走りとどう結びつくのか、いくら考えても思いつかなかった。
そういえば、あいつもやけにRに乗り換えた事にこだわっていた様だが。
また、しばらくの沈黙の後…

「そいつの話だと、ギャラリーに来た時に中里さんのバトルを見たらしいんです。で、それから走り屋に興味持ったって。
 多分、目標になってたんですよ、中里さん。あの頃の走りは、この前の庄司の走りと何となくかぶってましたから。」

それじゃ、と、高田は軽く頭を下げて自分の車に戻っていった。
高田の話をもう一度頭の中で繰り返し、あの時の庄司の表情を思い出す。
負けた悔しさだけではない、別の感情を浮かべた表情。
あれは、憧れていたものに幻滅してしまった表情だったのだろう。
もしそうだとしたら、知らなかったとはいえ裏切ってしまった事に違いは無い。
俺があいつを『デンジャラス』と呼ばれる男に仕立てた張本人だったなんて。

あと、俺に出来る事といえば、Rで勝ち続けることだけだろう、と思う。
いくらあいつに憎まれようと、誰にも、あいつにも負けるわけにはいかなくなった。

いつか、あいつが、俺を認めるまで――。



END

BURNING DESIREの続きです。
中里バージョンですね。
実は、慎吾バージョンもあったり
するのですが。
また、次回に。

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