LONELY LOVE



週末、というか、最近…。
中里は走りに来ない。
前までは、ただ来ないあいつにイラついて、その事情なんか知る気もなかったし。
別に来なくても、好きに走って帰るだけだった。
でも今は、来ない理由を知っている。
あまりにも顔を出さないんで、妙義から携帯を呼び出してやった。

 『今、ちょっと手が放せない仕事があるんだ。』

多分、まだ職場なんだろう。
久し振りに聞こえたあいつの声の向こうから、他の奴の気配を感じた。

 『悪ぃな…。』

そんな台詞を残して、携帯は切れた。
そして4、5日前、メールが入る。
 【明日から1週間ぐらい出張。】
たったそれだけ。
あいつらしい。


あれから、週末は中里の部屋に行っていた。
一応、ことわりは入れてるし、あいつも拒否しないから。
走りに来てない時も、ここにはいたから。
自然と週末はあいつと一緒にいるのが当たり前になっていて。
だから、こういう場合もあるという事が、頭になかった。
かっちりと閉じられたドア。
留守なんだから、当然といえば当然。

―――そういえば…出張って言ってたよなぁ……。

ドアにもたれて、そのままズルズルと座り込む。

―――こんなことも、あり…だよなぁ…。

居ないのだから帰ればいいんだと、頭の中でわかっている。
でも、ここから動けない。
閉じられたドアが、あいつの心のような気がして。
そんなこと考えてたら、ますます動けなくなった。

―――こんなことも、あり…だよなぁ…。

同じ台詞を繰り返し繰り返し…。

―――なんかオレって…バカみてぇ…。

膝を抱えて、額を押し付けた。
あまりの情けなさに、泣きそうな気分だった。



 「なにやってんだ、お前?」

突然頭の上から降りてきた声に、体が反応する。
顔を上げると、オレを上から覗き込む男の影。
廊下の照明を遮っているため、表情は見えない。

 「いねぇぞって、言ってなかったか?」

呆れたような、ため息交じりの声。
この部屋の持ち主。
その言葉に反して、ここにいるのはどうして?

 「…なんて顔してんだよ…。そんなに、待ってた、のか?」

 「じょ、冗談!誰が、てめーなんか!」

 「知ってた。まぁ、結構すんなり片付いたから、早めに帰って正解だった。
 …ほら、早くどけ。鍵、開けられねえだろ。」

全て見透かされたようで、そんなこと認めたくなくて、声を荒げるオレを簡単にいなして。
無造作に頭をがしがしとなでつけるあいつの手を、鬱陶しげにはらいのけた。
そんなオレに、やっぱり呆れたように笑うあいつ。
ここにどんな気分で居たかなんて、こんな余裕こいて笑ってる奴になんか、絶対教えてやらねぇ。

突然降ってきた声に、堅く閉じられた扉が開いた瞬間に、どれだけオレが安心したかなんて。

―――絶対に、教えねぇ…。



END



こんな慎吾って、あり…なんだろうか?
乙女回路全開になってますが。
うちのコンビはこんなもんです。
せっかく、気持ちが通じた(はず?)のに、いつまでたっても変わりなく…。
ま、もうしばらくは、このままでもいっかな?…なんてことも、思ってたり。

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