いつものように、2人でいた。
走り終わった、週末、深夜。
マシンの振動は、身体に残ったまま。
感情の昂ぶりは収まらず、眠るにはまだ惜しい時間。
慎吾はうつ伏せに寝そべって、TV情報誌を見ていた。
その横で、中里が車の雑誌を眺めている。
頁をめくる音、アルコールを口にする音。
それだけが響く室内。
「あ…。」
不意に慎吾が、声をあげた。
開いた頁には、今週放映される映画が掲載されている。
その中の一つに、慎吾の視線は止まったまま。
慎吾の声に、中里は雑誌から視線をそらした。
そっと、寝そべる慎吾に近寄っていく。
上から情報誌を覗く中里に、慎吾は気付かないまま。
そして、中里の視線もそこで止まる。
映画の中で繰り広げられる、公道ドラッグレース。
卓越した運転技術と、手の込んだ改造を施された車。
息詰まるカーチェイス、手に汗握るスピード感。
2人共、気に入っている映画だった。
「へぇ、今度の週末か…残業無ければ、見れるな。」
思いがけず近くから聞こえた声に、慎吾は頭を上げた。
慎吾に覆い被さるように見ていた中里の顔は、
急に見上げた慎吾の顔と触れてしまいそうなほど近い。
お互いの瞳に映る、お互いの表情。
(なんて顔して、見てるんだ…。)
(なんて眼で、見やがるんだ…。)
「「それって…反則だろ…。」」
視線を合わせたまま、身動きすら出来ず。
2人の時間が止まる。
自分の鼓動が、相手に伝わりそうなほど、
静寂に包まれる室内。
「「いってぇ〜〜!」」
「急に動くな!いてぇだろうが、この石頭!」
「てめえこそ、いつまでもボケッとしてんな!」
気恥ずかしさに、先に緊張を解いたのは、慎吾。
ぶつかった額を押さえて、涙目になっている2人。
お互いに文句をつけているが、さっきの状況に頬を赤らめたまま。
止まっていた時間が、また静かに流れ始める。
そんないつもの、週末の深夜。
END
見事にはずしてます。
本当はもう少し甘い展開にする予定が、見事に、挫折しました(苦笑)
いつもは長々な文になってしまうのですが、少しは簡潔になってるでしょうか?
なんだか、ほのぼの…。
文中の映画は、わかる人はわかるかも。
私も好きで、見ました…レンタルでしたが(^_^;)
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