先輩と得意先へ新年の挨拶回りに出ている最中、内ポケットに軽い振動。
ちょうど次の得意先に向かう最中で良かったと、先輩に軽く断り携帯を開く。
画面にはいつものように、見慣れた名前がその存在を主張している。
まったく…俺はまだまだ気楽な学生様とは違うんだっつーの…。
震え続ける携帯を溜め息混じりに眺めている俺に、先輩が出ろと合図した。
「あ…すんません…。」
言いつつ通話ボタンを押すと、途端にけたたましい声が耳を突いた。
『おっせーんだよっ!早いとこ、出やがれ!』
あまりの勢いに、思わず携帯を耳から遠ざける。
「スミにおけないな、中里。それが噂の彼女か?随分、威勢がいい…。」
「ち!違います!」
どこから出たのか、俺に彼女がいるという噂が流れていて。
ニヤリと意味深に笑う先輩に、俺は慌てて弁解した。
彼女だって?とんでもない!
電話の向こうで文句を言ってるあいつの姿を思い浮かべて、深く息を吐いた。
俺は携帯を手で覆って、声を潜める。
「昨日、言っただろ?俺は今日から仕事だって!帰ってからじゃ、遅いのかよ。」
しばらくの沈黙の後…。
『あー…そういえば、そうだっけ?んじゃ、いいわ。』
ブツッ…ツーツーツー…。
携帯を握り締めたまま、唖然とするしかない俺…。
いったい…何なんだ…?
そんな俺を見て、先輩が笑いをこらえながら言った。
「大丈夫か?今からそんなんで…。」
俺は苦笑いを返すしかなかった。
END
WEB拍手から、繰上げ。
今年もよろしくお願いしますm(__)m のSSでした。
うちではすっかり定番となってしまった、携帯ネタですが…。
相変わらずなマンネリで、申し訳ないです。
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