Repeated Start〜慎吾



世間は正月気分もようやく抜け始め、新しい日常へと戻りつつある、そんな日。
学生の身分のオレにとっては、まだ休日の感覚でしかない、少し遅い朝。
朝食とも昼食とも取れる食事をとって、暇つぶしにメールをチェックしたりして。

 「あぁ〜、つまんねぇ…。」

声に出しても、それに答える相手がいる訳も無く、オレは携帯を玩ぶ。

いつもはダチと出歩いていたオレが、家で正月を過ごすなんて家族は不思議がっていた。
正直、オレだって意外だけど、なんか出歩く気分にならなかったんだ。
あいつが、正月には実家に帰ると言っていたからか?
そんなこと、認めたくも無かった…けど…。
新しい年に変わる瞬間、携帯から聞こえてきたメロディーに、少し気持ちが緩んだ。
耳元から響いてくる声に、離れていた距離が一気に縮んだ気がした。

 「なぁ〜に、ダッセ〜ことしてんだよ!」

口ではそんな事言ったけど、繰り返す始まりの時に聞こえた声に安堵していた。
悔しいが、どこかであいつを感じたかったってのが、本心なんだ。

オレは玩んでいた携帯を持ち直し、確認するまでも無い番号を押す。
しばらく鳴り続ける呼び出し音を数え、次で出なければ切ろうと何度も繰り返す。
諦めかけたその時、呼び出し音が途切れた向こうに雑踏の気配を感じた。

 「おっせーんだよっ!早いとこ、出やがれ!」

第一声がこれなんて笑える…でも、オレらしいだろ?
電話の向こうで何か揉めてて、その後に響いた声に、やっぱりオレは安堵した。

  『昨日、言っただろ?俺は今日から仕事だって!帰ってからじゃ、遅いのかよ。』

そんなこと、知ってたっつーの…ちょっとした、退屈しのぎ。

 「あー…そういえば、そうだっけ?んじゃ、いいわ。」

そのまま、電話を切った…だって、オレの目的は終わったから。
ただ、声が聞きたかったって…そんな退屈しのぎ。


END



WEB拍手から、繰上げ。
今年もよろしくお願いしますm(__)m のSSでした。
うちではすっかり定番となってしまった、携帯ネタですが…。
相変わらずなマンネリで、申し訳ないです。

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