徐々に覚醒しつつある意識に、体中がギシギシと音を立てそうで、オレは小さく声をあげて寝返りをうつ。
ゴツゴツとする寝床に苛立ちを覚えて、不満たらたらに薄く目を開けた。
カーテン越しに射し込む陽の光の中、視界に入ったその光景に、オレの意識は一瞬飛んでいた。
まだ肌寒さが残る明け方、部屋の中は小さくともされた暖房に幾らかは温もりが感じられた。
今の自分は、フローリングに敷かれたラグの上で、丸まって雑魚寝していて…。
冷気を遮るようにかけられた毛布の中には、動揺しているオレと…あいつの無防備な寝顔があった。
なんだよ…!?何でこいつがここにいるんだよ…!!
もう完全に眠気は吹っ飛んでいて、どうしてこんな事になってんのか、訳わかんねぇ…。
オレは、たまにこうやって雑魚寝しちまうことがあって、その度にこいつは文句を言うくせに。
そういえば、昨夜は妙義で走ってから、いつもみたいにここに転がり込んだんだ。
昨日までに提出しなきゃならないレポートを仕上げるのに、その日はあんま寝てなくって。
だから、寝不足とアルコールも手伝って、オレは早いうちから潰れかかってた。
うとうとしてるオレに、案の定こいつは寝室で寝ろって煩かったけど。
そのうち、少し残してた仕事を片付けるとか言って、PCをたちあげるから。
オレ一人で、寝室で寝てろって言うから。
いつもここで寝込んだオレを、こいつが寝室まで抱えて運んでいたのは知っている。
これは、ちょっとした、嫌がらせ。
お前がここにいるのに、一人で寝てるのは嫌だ、なんて…このオレが言えるかってーの。
…ったく、いいかげん、それぐらい気付けっつーのな!
そんなことを思いつつ、オレはどうしてもこいつの寝顔から目が離せなかった。
だいたい、こいつの起きてる時と寝てる時のギャップが激しすぎなんだ。
起きてる時は、ガン飛ばしてんじゃねぇかってぐらいの目付きしやがるくせに。
こんなに隙ありまくりな寝顔なんて、想像できるはずない。
思わず伸ばした手が頬に触れそうな瞬間、眉間に皺を寄せて小さく呻き声をあげるから、少し吃驚して手を止める。
それでも、まだ起きる気配は無さそうなので、眉間を思いっきり小突いてやった。
「んっ…ぅ…。」
変な唸り声と共に、その眉間には一層深く皺が刻まれた。
ざまーみな!このオレに、こんな思いさせるお前が……。
「わ…りぃ……。慎吾…。」
「〜〜〜……。」
だぁーーっ!もう、どうでもいい!!
呼ばれた名前に途惑って、少しだけ熱る頬を認めたくなくて、温もりの残る毛布を引き剥がした。
途端に身体を縮こませて身震いしている姿なんて、普段からは想像つかなくて…だから、誰にも見せられない。
他の奴等に、見せたくない。
「いつまでも寝惚けてんじゃねぇよ!起きやがれ!!」
「さ…むい……。」
ざまーみろ…オレの気も知らねぇ、お前が悪い。
END
突発的に、更新。
何となく思いつき。
相変わらずの乙女慎吾ですが、
そろそろ苦情が来そうだな(^_^;)
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