風が、吹いていた。
          その風の中、密やかに…微かに声がする。
          声は距離を越え、時を越え…。
          あらゆる空間を渡り、会話を交わす。
          誰にも届かないほど、微かに、密やかに…。



桜 奇 譚 <序幕>



【また、我等の目覚めの時が来る。】

【また、人は我等の下に群がる。】

【人というのは、解せぬ物。】

【人というのは、実に面妖な物。】

【それを解するのも、また一興。】

【なんと、酔狂な…。】

【ほんに、ほんに…。】




          ザワザワ、ザワザワ、風が舞う。
          その吹き上げる風にのり、ひとひらの花片が舞う。

<2005/4/2>

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