はらはら、はらはら。
          散る花びらは、風に舞い。
          人はその下に、酔いて集う。
          花の紡ぐ、声も知らずに。



桜 奇 譚 <終幕>



【まったく、飽きもせず。】

【人の心の、奥深い事よ。】

【深く、強く、願う心。】

【人の願いなど、計り知れぬ。】

【与えようとも、受け入れぬ。】

【偽なる物は、受け入れぬ。】

【そろそろ我等も、眠りの時よ。】

【なかなかに愉快な、時節であった。】




          降り注ぐ花びらの中、人の願いは空を彷徨う。
          また明春、彼等は囁き、人は集う。

          声は距離を越え、時を越え…。
          あらゆる空間を渡り、会話を交わす。
          誰にも届かないほど、微かに、密やかに…。

<2005/4/2>

前へ /  いいわけ

ウィンドウを閉じて、お戻りください。