「先輩!今日の仕事は、もう終わりですか?」
社屋から出てきた埴史は、聞きなれた声に立ち止まり怪訝そうに水支を見つめる。
隣に並んだ水支は、埴史のそんな様子に苦笑いを浮かべた。
「そんなに構えないでくださいよ。別に、何も企んでなんかいませんって。」
「お前がそんな風に言う時は、何か奢らせようとする時だろう。」
「あははぁ…ばれちゃいましたか?でも、今日は本当にそんなんじゃないんです。」
埴史は、フッと息を吐くと眼鏡を押し上げた。
軽く俯いて髪をかきあげる水支の表情は、いつに無くかしこまっているように見えた。
「最近、よく思い出すんです…彼の、こと……あれから、もう、2年になるんですよね…。」
「彼?…そうか、もう、そんなに経つのか。」
魂を半分に裂かれ幾度も転生を繰り返していた彼…その魂は埴史と水支に宿り、
半身を捜し求める彼の想いのように、お互いを引き寄せあう。
邪神を封じ、己の魂を取り戻した彼は、今はまほろばの地で最愛の友との時を過ごしているだろう。
その彼との出会いも、ちょうどこんな時期だった。
あれから、2年…水支の言葉に、埴史も感慨を深めた。
「オレは、彼の半身が先輩で良かったと思ってます。オレが守るべき人が、あなたで良かった。」
「江藤…。」
水支の瞳が穏やかに凪ぐ湖のようで、埴史は思わず見惚れていた。
「運命を感じちゃってる割には、進展はイマイチなんですけど…。」
…前言撤回……埴史は呆れ顔でこめかみを押さえると、水支を残して歩き出した。
「あ…ちょっと、待ってくださいってば!先輩!」
先輩と出会った時点で、オレの運命は決まってた…なんて、恥ずかしくて言えませんけどね…。
そう思いながら、水支は足早に歩く埴史の後姿を追った。
END
WEB拍手から、繰上げ。
サイトの2周年ということで、2年目のこじつけです。
2周年記念という事で、こんなのでよろしかったら、貰ってやってくださいな。
お持ち帰りの方は、一言くださると嬉しいです。
(こんなの、いらないって…(-_-;))
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