伽月や琴音ちゃん、晃ちゃんは本当に楽しそうに笑う。
那須乃さんのあの高笑いだって、慣れると案外楽しい。
結奈さんや誠は、優しく笑う。
鼎さんにいたっては、豪快すぎていっそ清々しい。
皆の笑顔に、いつだって俺は暖かい力を感じていた。
飛河は、最近たまに笑顔を見せるようになった。
京羅樹は、いつも皮肉っぽい顔で笑う。
伊織さんは、作り笑いじゃない笑顔をくれる。
凛さんも、はにかみながら笑ってくれる。
力を得る代わりに何かを失いながらも、笑顔を見せる彼等は強いと思う。
でも、何かが抜けてしまったんだ…。
皆の笑顔が温かいのに、皆の笑顔が力強いのに、何か足りないんだ。
俺が一番、欲しい笑顔がそこに無いから。
一番安心できる笑い声が、聞こえてこないから。
俺が…それを消してしまったから……。
いつも笑っていた。
どんなに厳しい状況でも。
どんなに傷ついていても。
どんなに苦悩していても。
あなたはいつも笑顔だった。
だからって、最後までそんな顔するなんて。
だからって、自分だけで背負い込むなんて。
だからって、そんな言葉を笑顔で言うなんて。
だから…俺はあなたが嫌いです。
だから……そんなこと言わないでください。
―――じゃあな…。
俺は、あなたと一緒に、笑顔を失くしました。
俺は、あなたと一緒に、感情を失くしました。
俺は、あなたと一緒に、未来を失くしました。
俺は、あなたと一緒に、自分を失くしました。
綾人さん…俺は……。
何も、失いたくなかったんだ。
END
<2004/9/30>
突発的に、書いてます。
完成1時間ってとこでしょうか?
笑顔というお題のわりに、暗いです。
それも、8話あたりが背景にあるからですね。
笑顔といえば、この人しか思いつかなかったんですよ…。
最後まで、笑ってて欲しかったよ、九条総代!
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