お前は、こんな俺のことを、どう思う?


7.怒り



俺は、今ほど自分を愚かだと思ったことは無い。
御子だ、宗家だとおだてられ、自分の器の浅さも知らず。
そんな事に、今さら気付かされる。


こんな形で去る俺を、お前はどう思う?
お前は、怒るか?
そう…だろうな…。
自分でも、そう思うよ。
誰にもそんな想いをさせないよう、
俺が片をつけるつもりでいた。
俺がやるべきことだと、変えられると、信じ込んでいた。
お前達がいれば、古くからの流れを変えられると、本気で。
だが、それを成すのは、俺ではない。
今になって、気付いたんだよ。
俺の役目は、それでは無い。


俺は、俺の役目を果たす。
そのために…お前に重いものを背負わせてしまった。
俺が一番忌んでいたものを。
許してくれとは、到底言えない。
俺は、お前の怒りの矛先でいい。
その怒りの全てを、俺が受けよう。
そして、お前は、御子となる。
どうやら俺は、その器では無いらしい。
俺の役目は…お前を導く案内人。
ここで、お役御免だ。


今さらこんな事、言えた義理ではないが、
後の事、よろしく頼む。
天魔を鎮め、平安の世を。
郷の忌まわしい因習を、変えて欲しい。
未知の力を秘めた、お前達の存在で。
そして出来るなら…結を、支えてやってくれ。

「最後に、お前と、話せて、よかった。」

…俺に、何も言う資格は、無い。
このまま、言わずに逝く。
この言葉に、全てを込めて。

「じゃあな。」


墜ちていく、闇の中、
身を裂かれるような、お前の声。
こんな俺を、お前はどう思う?
お前の怒りの中に、残された俺を。

飛鳥…お前は。


END


<2004/11/20>

言うまでも無く、7話です。
あまりにも、切ない…。
総代の、一人語りです。
『笑顔』と対で…と思ってたのですが、
あまり関係ないかもしれない(-_-;)

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