19.決別〜弐年間の日常



飛鳥にとっての高校生活は、2年で終わりを迎えた。
その終わりはあまりにも唐突に訪れる。
幼稚部から初等部、中等部と、幼馴染の伽月や詩月と一緒に進級してきた。
その日常は高等部へ行っても変わらず、ずっと続くと思っていた。
詩月が急に体調を崩したり、少しずつ周囲が変化を見せ始めたが、飛鳥は何事も無く平凡な一般生徒として、
高校生活を終えるはずだった。
2年に進級した春、相変わらず伽月に振り回されていた飛鳥の日常を変えてしまった、彼との出会い。
桜が咲き誇る興和苑で、舞う花びらの向こうに霞む彼の姿。
その時から、飛鳥の日常は終わりに向かっていた。
それまでは言葉を交わす事も無かった彼―九条綾人は、初対面の飛鳥に対して親しげに微笑む。
真っ直ぐに見つめる九条の視線は、飛鳥の心を忙しなくさせた。
天照館総代である九条からの、執行部への勧誘が始まったのはこの時から。
伽月と共にずっとその誘いを断り続けたのは、自分がその器ではないと思っていたこともあるが、
心の奥底で何か予感めいたものを感じ取っていたからかもしれない。
自分の日常が、変わってしまう予感。
だが、九条の真摯な瞳や飾らない人柄に、惹かれていたのも事実。
高みの人物であった九条が自分を必要としているなんて想像もしてなかったし、
九条が確実に飛鳥の中にある可能性を見い出していたことも知らなかった。
それが九条にとっても終焉に向かっているということは、飛鳥にも、九条本人にもわからなかった。
執行部へ参加してから、飛鳥の中に眠る力はどんどん開放されていく。
今までこれほどの力が秘められている事に、何故誰も気付かなかったのかと思うほど。
そして、不意に訪れた九条との別れが、同時に飛鳥の日常に終わりを告げた。
怒涛のように過ぎる日々に、心が欠けたまま流されていく。
九条と出会った同じ季節…飛鳥は日常と決別した。

END

WEB拍手公開。<2005/11/13> / UP。<2006/1/14>

WEB拍手から、繰上げ。
サイトの2周年ということで、2年目のこじつけです。
2周年記念という事で、こんなのでよろしかったら、貰ってやってくださいな。
お持ち帰りの方は、一言くださると嬉しいです。
(こんなの、いらないって…(-_-;))

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