「なぁなぁ、飛鳥!そろそろ、”あの”時期やなぁ。」
「”あの”時期、って、何のことだよ。」
授業が終わって駆け寄ってくる晃に、飛鳥はあまり気乗りのしない風に言葉を返す。
「またまたぁ、とぼけんでもええやん!今月のイベントと言えば”あの日”しかないやろ?」
これほど楽しみにしている晃に、何の予備知識も無くあの日を向かえさせるのは忍びない…。
飛鳥は真実を告げることを躊躇っていたが、あの日に立ち向かう心構えを告げる決心をした。
「晃に、言っておきたい事があるんだ。」
「なんや…そない難しい顔して…。」
眉をしかめる飛鳥につられて、晃も思わず神妙になる。
「まず、伽月のチョコは、絶対に食べちゃダメだ。」
「なんでや!せっかくカヅはんが心を込めてくれるモンなんやろ?」
「だからだよ…伽月が”心を込めて”手作りした物だから、食べちゃダメなんだ。」
晃も『手作り』という単語に反応したらしく、渋々と頷いた。
「それから、那須乃のチョコは、なにがあろうと那須乃のだから。」
「どういうこっちゃ?そんなん、あたりまえやん…。」
「そう、絶対に、疑っちゃダメだ。」
「なぁ、飛鳥…ワイ、いまいち状況が理解できへんのやけど…。」
ますます混乱している晃に、飛鳥はただ忠告するしかない。
「最後に、今からでも甘いもの断ちしといた方がいいよ…あぁ、胃薬もいるかな。」
「甘いモン断ち?胃薬まで…いったいここは、なんちゅうとこやねん!」
想像力も限界に達し、晃は頭を抱えながら苦悩の表情を浮かべた。
「これは鍛錬だよ、晃。自分の限界を、見ることになるかもしれないけど。」
力無く笑い席を立つ飛鳥に、晃は嫌な予感に襲われていた。
END
WEB拍手公開。<2006/2/14> / UP。<2006/3/14>
WEB拍手から、繰上げ。
天照館にも、バレンタインはあるのか?
でも、こんなほのぼの(?)もあったらいいのにな。
なんて思ってカキカキ…してるうちに、
長々となってしまいました(汗)
なので、続いてしまいますm(__)m
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